グランドシティ・プロジェクト
 高齢者のための都市をつくるプロジェクトです。グランドシティとは、シティ・オブ・グランドマザーズ・アンド・グランドファーザーズという意味です。お年寄りが安心して暮らせて、学べて、遊べて、買い物できる街。また、理想的な介護が受けられ、病気の際は設備の整った病院に行けて、そして満足のいく余生を送り、自己表現や自己実現としての個性的な葬儀で旅立つことができる街のことです。
 世界一の高齢化国である日本に最も求められるのは「老い」に価値を置く「好老社会」の実現です。そして、日本が好老社会になるためには、日本一の超高齢化都市である北九州市が「好老都市」になる必要があります。東京でも大阪でもなく、北九州市こそが、まず先駆けとして「好老都市」になるべきなのです。私は好老都市のことを、高齢者が幸福になれる街という意味で、「老福都市」と呼んでいます。そして、国際的にアピールするために「グランドシティ」という言葉を使っているわけです。ともに非常にポジティブな印象があるとの評価を多くいただいています。
 現在、特区行政ということで、物流特区など数多くの特区が全国につくられています。私はぜひ北九州市に「高齢者福祉特区」をつくるべきだと思います。全国には一人暮らしの高齢者がなんと300万人以上もいます。その方々をはじめ、全国の高齢者が北九州市の高齢者福祉特区に集まってくればよいと考えています。
 もともと北九州市は全国で最も医療施設や介護施設が充実していると言われますが、それらをさらに充実させて、逆に税金や医療費は安くします。買い物はもちろん、高齢者向けのカラオケボックスやスポーツクラブなどのレジャー施設やカルチャー施設も充実させる。つまり、徹底して高齢者にとって安心で楽しくて生きがいを持てる街をつくるのです。
 もちろん、これらをすべて北九州市民の税金だけでまかなうのは大変ですし、はじめから不可能です。そこで特区として、国に負担してもらう。国も、全国に先駆けて理想的な高齢先進都市のモデルづくりができれば、国益を高めると判断するはずです。全国各地でバラバラに高齢都市モデルをつくるより、日本一の高齢都市である北九州市において集中的に実験した方が効果は上がるはずです。
 私が思うに、北九州ほど日本人の豊かさに貢献してきた土地はありません。かつては筑豊で大変な思いをして石炭を掘り、八幡では鉄を製造して、日本人を豊かにしてきた。今後は、グランドシティの実現によって、「老いの豊かさ」という新しい価値を全国に発信していけるのではないでしょうか。2004年2月に北九州市八幡西区にオープンした世界初の複合高齢者施設「サンレーグランドホテル」は、グランドシティのモデル施設として位置づけています。
 さらに、私は北九州市と並んで、高齢者の移住がめざましい沖縄県にもグランドシティのモデル施設をオープンさせる必要を感じました。沖縄県も北九州とは違った「老いの豊かさ」を発信できると確信したからです。医療や介護を求める高齢者は北九州に、健康に不安がない高齢者は温暖でリゾート感覚あふれる沖縄に集まれば素晴らしいと思います。その考えのもと、2006年3月には、沖縄県浦添市にやはり複合高齢者施設である「サンレーグランドホール」をオープンさせる予定です。
 北九州と沖縄の二つのグランドシティから、全国いや全世界に向けて「人は老いるほど豊かになる」というメッセージをさまざまな形で発信していきます。

©一条真也

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