宗遊館プロジェクト
 言語としての「教え」ではなく、非言語としての「遊び」を通して普遍的なメッセージを伝えるプレゼンテーション・システムが「宗遊」です。この「宗遊」というコンセプトをわかりやすく展示するミュージアムが「宗遊館」です。2004年2月に北九州市にオープンした「サンレーグランドホテル」内に開設されました。
 拙著『リゾートの思想』に書きましたが、四国遍路は、空海がプロデュースしたマインド・リゾートです。まさに巨大な「宗遊」の場ですが、四国遍路のミニチュアとして、八十八カ所の砂を集めた「お砂踏み」があります。実際に四国遍路を歩かなくても、一カ所でそれと同じ効果が得られるとして高齢者に大変な人気ですが、この「お砂踏み」が宗遊館内に常設されています。
 また、空海は日本に初めて「曼荼羅」(まんだら)を紹介しています。空海は曼荼羅について、「密教の教えは奥深くて、言語・文字で表現することは困難であるから、仮に図画をもって密教の大生命の世界をまだ知らない人々に示す」と説明しています。サンレーグループの佐久間進会長は、長年にわたって貴重な曼荼羅を多数コレクションしており、その一部が宗遊館に常設展示されています。思わず息を呑むほどカラフルなマインド・アートです。
 さらに、曼荼羅と並ぶ仏教美術として「十牛図」も展示されています。禅の悟りに達する過程が、失われた牛を探し求めるようすを描いた十枚の図で表現されています。禅では、この十牛図を用いて悟りへの瞑想を行ないました。まず図を一枚ずつよく見て、全部の図が順に頭の中でイメージできるようにします。そして一枚一枚、図中の人物になりきるトレーニングを繰り返すのです。続けているうちに、「仏とは何か」「自然とは何か」「自分はどう生きるべきか」「本来の自分とは何か」といったことが自然とわかってくるといいます。
 宗遊館は、お砂踏み、曼荼羅や十牛図の展示の他にも、さまざまな企画を予定しています。「太陽」「月」「気」「風水」といったテーマの企画展、メーテルリンク『青い鳥』や宮沢賢治『銀河鉄道の夜』などの霊的真実を秘めたファンタジー・メルヘンの朗読会、世界の神話や民話の人形劇、各種の宗教音楽や宗教舞踊の実演、「老い」や「死」や「神」を扱った映画の上演会など、その他にもさまざまな企画が目白押しです。

©株式会社サンレー

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