2005
07
株式会社サンレー
代表取締役社長
佐久間 庸和
「気は宇宙のエネルギー
気功はサンレー文化そのもの!」
気功は当社の代名詞のようで、「サンレーといえば気功」というイメージを持っている人が多いようです。よく産霊気功を行なっている場面がマスコミで紹介されるせいでしょうか。最近では、サンレーグランドホテルのテレビ取材で必ず、グランドカルチャーセンターの気功教室の風景が登場しています。
一九八八年の「気業宣言」導入以来、すっかり「気」という考え方はサンレーグループに浸透し、気功という文化も定着しました。ですから、あらためて話す必要もないかもしれませんが、復習の意味でおさらいしたいと思います。というのも最近、再び「気」に対する世間の関心が高まっているからです。五木寛之氏の『元気』や『気の発見』などの関連本も多く出され、話題になっています。
およそ日本語を用いた日常会話の中で、「気」という語が出てこない会話は皆無といっていいでしょう。天気、元気、人気、殺気、短気、暢気、陽気、陰気、意気、吸気、呼気、排気、臭気、香気、怒気、和気、換気、血気、熱気、冷気、乗気、心気、神気、霊気、邪気、正気、狂気、病気、雰囲気、気配、気分、気配り、気遣い、気前、気まぐれ、気まずい、気まま、気晴らし、気張る、気転、気長、気立、気体、気息、気付、気疲れ、気丈夫、気象、気性、気心、気骨、気力、気韻、気候、気孔、気位、気球、気管、気軽、気兼ね、気概、気温、気化、気負い、気鋭、気圧、気品、気持ち、気弱、気楽、気流、気がかり、気に入る、気になる、気にする、気がする、気が重い、気が軽くなる......などなど、数えあげればきりがありません。
そもそも、私たちの日常会話は、挨拶のあと「お元気ですか?」「いいお天気ですねえ」などと、すぐさま「元気」や「天気」の話に移るのが常です。これほど多くの「気」をめぐる単語があるということは、意識するしないにかかわらず、日本人がつねに「気」の流れや状態を気にしてきたということを物語ります。何よりも私たちはまず、天気や元気といった「気」の変化を察することから一日をはじめるのです。
もちろん、「気」という語は中国語に由来します。中国・台湾、韓国・朝鮮、日本のいわゆる漢字文化圏は、それぞれ独自の気の文化圏をつくりあげたと言えるでしょう。
とりわけ日本語では、「気」は中国におけるような哲学を捨て、むしろ世界を読み、世界と関わり合う技術として、また生活感覚として発達をとげました。こうして日本人は、「気」を感じる生活技術を自然と人間との交渉の中で練りあげていったのです。
「気」の概念が中国の古代哲学に由来することはよく知られていますが、たいていの辞書を引くと、必ず最初に、《「气」は「雲気」である》と出ています。「気」の古語が「气」ですが、それは何よりもまず「雲気」の象形文字と考えられていたのです。天と地のあいだにあって、あるいは雲集し、あるいはたなびき、あるいは走り、あるいは勢いよく刻一刻姿を変えてゆく、その変化する「雲気」のさまを「气」と名づけたというのです。
先月がまさに雲の話でしたが、「気」が「雲気」からはじまっている点は重要です。というのも、目に見える日常の諸現象の中で、雲の動きこそが最も明瞭に天地自然の運動性をさし示しているからです。しかもそれは、生成変化ないし出現と消滅をくりかえす、目に見えないものと目に見えるものとをつなぐメディアであり、それが目に見えない精神と目に見える物質に橋を架けるものと考えられるようになるのは自然な流れでしょう。
こうして、「気」は、第一に、目に見えないものと目に見えるかたちをつなぐ雲の姿や動きとしてとらえられ、第二に、それは自然と人間とをつなぎ、その両極に浸透して変化し、両者のコミュニケーションを連続的に行なう不可視な存在とされたのです。
さらに、「気」について考えてみたいと思います。
「気」とは、いったい何か。まず、宇宙と人間との関わりからはじめましょう。人間は、大宇宙すなわち自然の中に生命を与えられた小宇宙です。東洋医学には、人間と自然との真理を示すのに五行説があります。一年の春夏秋冬を四季と呼ぶが、夏と秋のあいだに土用が入って、季節は五季。人間の身体には肝、心、脾、肺、腎があって、これを五臓と呼ぶ。また、目、舌、口、鼻、耳から感じる感覚を五感と呼び、味についても五味という表現があり、人間と自然との関わりで「5」が重要なキー・ナンバーになっています。
さらに、一年は十二ヵ月、人間の体内に走っている経路は十二脈、一年は三百六十五日、ツボと呼ばれる体内の経穴は三百六十五ヵ所、大動脈は十二脈、静脈は三百六十五脈、大きな関節は十二、小関節は三百六十五といったふうに、人間と宇宙とはミステリアスなまでに対応しているのです!
その宇宙には気という生命エネルギーが満ちています。人間や動植物は、宇宙から気のエネルギーを与えられて生まれ、また宇宙の気のエネルギーを吸収して生きているのです。東洋医学では、人間は天の気(空気)と地の気(食物)を取り入れて、体内の気と調和して生存しているといいます。科学的に見れば、気は一つの波動なのです。したがって、気が乱れると病気になってしまいます。
荘子は「気が集まればそれが生命である。気が拡散すれば死である」と言いました。人間というものは天の気、地の気が集まってできた存在であり、その気がなくなれば死ぬというのです。東洋医学というより、東洋思想の根本的な考え方は「気」を中心に置いています。東洋思想は、人間の誕生についてもこう考えます。宇宙は混沌としたカオスの状態であり、その中から陰と陽の気が発生して、重さの軽い陽の気は天に昇って「天の気」となり、重い陰の気は下に沈んで「地の気」となった。天の気と地の気ができたのです。そして、陰の気と陽の気が合体して一つになり、人間の生命が宇宙に誕生した。よって、人間の生命は気の統合によって生まれ、気によって生かされているというわけです。
人間の身体とは、気の流れそのものに他なりません。ちょうどバッテリーのようなものです。バッテリーは放電ばかりしていると、電気がなくなってしまう。長くもたせたいならば、ときどき充電しなければなりません。人間も同様で、気の充電をしなければ気力もなくなり、やる気も起こらなくなって、ついには病気になって死んでしまう。
気を充電する身体技術を、気功といいます。先に人間と自然の関係について述べましたが、気功で大事なのは、朝起きて大自然の中で自然のフレッシュな気を深呼吸することです。朝五時から五時半という時間帯は植物も動物も目覚め、自然の気を取り入れています。人間も体内に朝の大気を丹田呼吸という下半身でする呼吸によって取り入れ、気を養うことを心がけるべきです。人間は大宇宙の中で生かされている自然の子なのです。
また、朝、太陽の光を浴びること、さらに言えば、太陽を呼吸することも大切です。睡眠や食事も気の充電法であり、大事です。人間にとって睡眠は欠かすことのできないものであるとともに、自然のリズムに従った生物時計を回復する必要があります。人間は眠ることによって、日中放出した気を充電します。また、食物は地の気と呼ばれる。
「医食同源」という言葉がありますが、食とは医であり、薬なのです。自然の摂理に従って旬のものを食べ、味に気づき、過食せず、規則正しく食を取ることが大事なのです。
サンレーには、気を充電する独自の技術として「産霊気功」があります。これは佐久間会長が自ら開発して、改良を重ねたものです。もともと会長が気功を知ったのは四半世紀も前のことです。九州大学名誉教授で日本心身医学の父といわれた故・池見酉次郎氏と懇意になり、その存在を知ったのでした。そして、一九八五年に北九州商工会議所の中国経済使節団に加わったとき、現地で実際に気功を行なっている人々を目撃しました。夜も明けていない広場に何十人もの人が集まり、思い思いに両手足の屈伸運動をしたり、上半身を左右にひねったりしている。一見すると日本のラジオ体操のようだが、リズムに合わせる音楽が流れているわけではない。動きはゆっくりしている。注意して見ると、手を下ろすときなど、息を全部出し切っている。まるで、手を下ろすことによって胸の中の空気を外へ出すのを手伝っているようでもある。やがて朝日がさしてくると、人々は左右に大きく広げた両腕をゆっくりと、目の前の大気を自分の体に抱え込むようにして終わる。一連の運動の中には、会長自身が「健康八正道」として実践していた正しい呼吸、無理のない動き、正しい姿勢などの要素がすべて含まれている。「これだ!これなら一人で、一日に何回も、しかも長続きする」と、会長はひざを叩いたそうです。日本に帰る機内で、会長は考えました。
「松下幸之助が松下電器産業を築き上げたのは、カネがない、健康にめぐまれない、学歴がない、の<三ない>を逆手にとって気力で立ち向かったのではなかったか。世の中には元気な人もいれば、病気がちな人もいる。陽気と陰気、強気と弱気、さまざまだ。人生のプラス面を引き出すのが気功だ。元気はつらつ、陽気で、やる気満々の人間集団だと、企業も活気づく」帰国の翌年には、中国政府に働きかけて、中国医療と健康づくりを紹介、指導する「健康博覧会」というビッグイベントを北九州で開催。大連市から医師、気功師で組織する健康使節団が訪問して、全国でも珍しい大規模な気功イベントとして大いに注目されました。さらに翌年にはサンレー主催で東洋医学による治療を希望する人を中心に募り、大連に渡りました。その後も、気功研修ツアーを企画し、大連で気功の権威である許紹延師の指導を受けています。そして、その集大成が一九九一年の「九州国際気功協会」の設立でした。もうこの頃には全国で気功ブームが巻き起こっていましたが、すでに五年以上もの熟成の時間をかけた本格的な気功団体として世に認知されました。名誉会長に池見酉次郎氏をいただき、佐久間会長が会長に就任しました。
現在でもサンレーグループの各職場で行なわれている朝の気功は、こういった伝統に基づくオリジナルなものであり、当社の大きな文化的財産であると言えます。冠婚葬祭やホテルというホスピタリティ・サービスに携わる者にとって、最も重要なものがプラスの気です。なぜなら、自分自身が充電した気をお客様に対して放電しなければならないからです。サンレーグループ社員自らが気を充実させ、元気、陽気、楽しい雰囲気、厳かな雰囲気といったプラスの気をお客様に与えること。それが産霊気功の目的なのです。サンレー創業以来、「気づき、気配り、気働きこそホスピタリティそのもの。この三つの気は礼法に通じる」を佐久間会長は信念としてきました。その意味で、サービスは「気」に通じ、サービス業とは「気業」であると言えるでしょう。さらには、サービス業に限らず、企業そのものが「気業」であるとも考えられます。企業とは、経営者の持っている気が社員に乗り移る一個の生命体であると私は思っています。経営者が強気で陽気なら、強気で陽気な会社となり、その逆なら、弱気で陰気な会社となるのです。そのように「気業宣言」には深い意味があるのです。
「産霊」という言葉の真の意味は民俗学者の折口信夫なども明らかにしたように「人間の身体に万物創造の生命エネルギーを容れる技術」ということです。実は、それは「気功」そのものの説明ともなります。すなわち、「産霊」と「気功」とは同義語であり、同義語を二つ重ねてその意味を強化したのが「産霊気功」なのです。
気功はサンレーのもう一つの意味をなす「礼」にも通じています。鎌田東ニ氏は、気功のエクササイズについて、リラックス・コンセントレーションからはじめて、イメージを活用しながら、心身中の気脈を通じ、拡げ、内気脈と外気脈とをつなぎつつ気の流通をはかる、龍脈ネットワークの発掘と確立にねらいがあると述べています。私たちの生命系は、私たちが思っている以上、感じている以上に複雑多様、複雑微妙であり、相互依存関係にあることを気功は教える。こういった関係を知ることは、個別で特殊な感覚ではなく、きわめて普遍的な存在する者のあいだの関係のありように由来する共通感覚なのです。このような共通感覚を孔子は「礼楽」という心身の倫理と芸術に再編集したのだというのが、我が国を代表する宗教哲学者である鎌田氏の主張です。サンレーの社名の意味をなす太陽、産霊、そして礼楽にさえ直結する気功!まさに気功はサンレー文化そのものであることを思い知るではありませんか。
みなさん、朝の気功に励みましょう!
天と地の与えし力 身に容れて
人に尽くさん 産霊気功 (庸軒)