第10回
一条真也
「人間関係がキーワード」

 

 これからの社会のキーワードは「人間関係」ではないでしょうか。社会とは、結局、人間の集まりです。そこで「人間」よりも「人間関係」が重要な問題になってきます。最近は「人間関係」をテーマにした本が多く出版され、大きな関心を集めています。
 人間関係は難しいものです。人は一人では生きられません。だから、死ぬまで人間関係には悩まされます。特に会社という組織の中にあっては、その悩みは尽きないようです。サラリーマンが会社を辞めたくなる理由のトップは職場の人間関係です。仕事のつらさ、給料の安さより、人づきあいのほうが大きなウエイトを占めているのです。人間関係がいかに大切かということがよくわかりますね。
 かの夏目漱石は『草枕』の冒頭に、「智に働けば角がたつ。情に棹されば流される。意地を通せば窮屈だ。とにかく人の世は住みにくい」という有名な言葉を残していますが、これも人間関係の難しさを語っているわけですね。
 そもそも「人間」という字が、人はひとりでは生きてゆけない存在だということを示しています。人間は「関係」がすべてです。あいさつ、会話、笑顔...私たちも、少しでも、「良い人間関係づくり」に努めたいものです。