第11回
一条真也
「卒業式のシーズンに思う」

 

 3月は卒業式のシーズンですね。私は冠婚葬祭と縁が深いのですが、いつも思うことがあります。それは、この世のあらゆるセレモニーは卒業式ではないかということです。七五三は乳児や幼児からの卒業式であり、成人式は子どもからの卒業式。通過儀礼の「通過」とは「卒業」のことなのです。
 そして、結婚式というのも、やはり卒業式だと思います。結婚披露宴で一番感動を呼び、参列者のあいだに共感を生むもの、それは花嫁による両親への感謝の手紙です。そこには、今まで育ててくれた両親への感謝の言葉とともに、家族から巣立ってゆくことの寂しさ、そして夫となる人とともに新しい家族を築いていくことへの希望と決意が述べられています。なぜ、昔から新婦の父親は結婚式で涙を流すのか?それは、結婚式とは、娘が家庭という学校を巣立つ卒業式だからです。
 そして、葬儀は人生の卒業式です。日本人は人が亡くなると「不幸があった」などと言いますが、死なない人間はいません。必ず訪れる「死」が不幸であるなら、どんな素晴らしい生き方をしようが、あらゆる人の人生そのものも不幸で終わります。日本人に「葬儀は人生の卒業式」という考え方が広まり、「死」が不幸でなくなるといいですね。