2001
11
株式会社サンレー

 代表取締役社長

  佐久間 庸和

「S2Mの精神をもって

 21世紀にチャレンジ!!」

 10月1日より社長に就任いたしましたが、私自身あらゆる面で未熟であり、社長に就任するのはまだ早かったかなと正直言って不安に感じるところがありました。しかし就任して1カ月半、「とにかくやるしかない」という状況の中、懸命に全速力で走ってきました。現会長つまり前社長の存在があまりにも大きく、サンレー=佐久間進というイメージがありますので、後を受け継ぐ者としましては非常に難しいことを改めて感じましたが......二、三年後にみなさんが「あのとき、社長が急に交代して不安に感じたこともあったけれど、結果的には上手くいった」と言っていただけるように、自身の行動や姿勢で示して、社長業を精一杯全うしていきたいと思います。
 会社にとって一番偉いのは社長ではない。一番偉いのはお客様です。社長や専務や常務は、逆三角形のピラミッドを支える縁の下の力持ち。そのピラミッドのトップにいるのは、お客様と直接接する現場、すなわち営業所・松柏園(現マリエール・オークパイン)・平安閣・紫雲閣のみなさんです。そして本部・本社は、現場のみなさんを応援するサポートセンターともいえるでしょう。ですから、私は今まで以上に現場を重視して、現場のみなさんが働きやすい、汗や努力が報われるような会社にしていきたいと思っています。
 さて現在、アメリカの同時多発テロに象徴されるように、世界は非常に「破壊的な流れ」があります。それに反するように「精神的な流れ」が存在することも無視してはいけません。だからこそ、数多くの識者たちが21世紀は「心の時代である」と言い続けているのです。心の時代とは─私は哲学と芸術と宗教の時代であると思います。21世紀は哲学・芸術・宗教のルネッサンスの世紀となることでしょう。そして、冠婚葬祭はそのすべてに関わっているのです。
 冠婚葬祭業は哲学産業です。私は哲学とは「驚くこと」だと思っています。生きていることに驚き、見知らぬ男女が結婚するという不思議に驚き、そして人が死んでいくという不思議に驚くことです。そういう意味からも冠婚葬祭業は哲学的な産業だといえます。
 冠婚葬祭業は芸術産業です。芸術とは「演出」とも言えます。哲学が自分自身が「驚く」ことであるなら、演出は「驚かせること」といっても過言ではありません。演出とは、松柏園ホテルを例にとると「ザ・ブリティッシュクラブ」「グラン・フローラ」なのです。これらは、私たちが知恵を出し合い、「お客様をどのように驚かせてさしあげようか」といった発想で創ったものなのです。だからこそ冠婚葬祭業は芸術産業であり、またホテルこそは芸術産業の最高峰であると私は思っています。  冠婚葬祭業は宗教産業です。葬儀についても、結婚式についても、冠婚葬祭業とは神様・仏様とお客様との仲介を果たすエージェント的な役割を担っているのです。神聖な宗教産業に携わるわれわれは何よりも神仏を敬い、「思いやり」「感謝」という二つの心が必要です。
 さらに冠婚葬祭業は平和産業であり、平等産業と言えます。結婚ほど平和な事柄はありません。人と人とのいがみ合いが発展すれば最終的には破壊(戦争)へと至ります。結婚式─人と人とが結ばれることは究極の平和であり、非常に素晴らしいことなのです。
 また、葬儀も平和と平等に関わっています。私は常々「死は最大の平等である」と言ってきました。どんなお金持ちでも、貧しい人でも死は平等に訪れるのです。
 今でも、ワールド・トレードセンタービルの瓦礫の下に、数多くの人々の亡骸が残されているといいます。私は、何とかこの方々に、人間らしい葬儀をしてあげることができたらと、いつも祈っています。10万年前のネアンデルタール人の埋葬以来、葬儀は「人間の尊厳」と深く関わっているのです。
 冠婚葬祭業ほど注目されるべき素晴らしい仕事はありません。新体制のもと、「S2M」という21世紀の新たな理念をもって、みなさんとともに存分に力を発揮していきたいと思います。
(社長就任スピーチ 2001年11月18日)