2007
09
株式会社サンレー

代表取締役社長

佐久間 庸和

「掃除を続ければ商売繁盛

 そして、自分の心も磨かれる!」

●清掃しない会社は倒産する
 日本電産社長の永守重信氏という人がいます。会社再建の名人として有名な人ですが、「倒産する会社の共通点」の一つとして、工場の清掃が行き届いていないことを挙げています。
 永守氏は清掃というものに早くから注目し、1975年ごろから日本電産の新入社員は一年間トイレ掃除をするという習慣ができあがったそうです。しかも、ブラシやモップなどの用具は一切使わず、すべてを素手でやることになっているといいます。便器についた汚れを素手で洗い落とし、ピカピカに磨き上げる作業を一年間続けると、トイレを汚す者はいなくなる。 
 これが身につくと、放っておいても工場や事務所の整理整頓が行き届くようになってくる。これが「品質管理の基本」であり、徐々に見えるところだけでなく見えないところにも心配りができるようになれば本物だというのです。
 工場のみならず、サービス業の施設においても、まったく同じことが言えますね。

●拭く拭くは、福々である
 掃除について、江戸時代の狂歌師である大田蜀山人が「雑巾を 当て字で書けば 蔵と金 あちら福々 こちら福々」という歌を詠んでいます。福々は「拭く拭く」です。
 この精神を哲学にまで高め、「掃除福々」を唱えている人物が、イエローハットの創業者であり、現在は相談役の鍵山秀三郎氏です。掃除に関する第一人者としてよく知られています。
 著書も多く、わたしは縁あって、そのすべてを読みました。鍵山氏は、雑巾がけ一つにしても、力を込めて少しでもきれいにしようという気持ちが必要であり、できれば「あちら福々 こちら福々」となるような拭き方がよろしいと述べています。
 今や、「掃除の神様」として全国にその名を知られる鍵山氏は、毎日、ほうき一本、ちりとり一つで会社の付近を掃き続け、温泉旅館に行けば、他人の洗い桶やスリッパまで揃えるそうです。イエローハットでは掃除はもちろん、出前の器も必ず洗って返し、車もすべて社員が洗うのでガソリンスタンドで洗車してもらったことがないといいます

●掃除をしないと、心がすさむ。
 そのやり方を合理的でない、生産性がないと考える人は多いでしょう。しかし鍵山氏は、「自社にとって不都合なことを他者に転嫁しているとどうなるかというと、社員は間違いなくすさんでいきます。思いやりのない集団になって、だんだん心がすさんでいきます」と言います。すさんだ心の集団、会社ほど悲惨なものはなく、いくら経常利益を上げてマスコミでどれだけもてはやされても、そんな会社はいい会社ではないというのです。
 「それよりも、郵便を届けてくださる方、出前を持ってくる人、商品を届けに来る人、運送会社の運転手さんといった人に思いやりが持てるような会社でありたいと思います」
 そう述べる鍵山氏が郷里から初めて東京に出てきたとき、お金もないし、何もない。何ができるかと考えた末、雑巾とほうきとちりとりなら、いくら貧しくても用意できることに気づきました。
 以来、ものごとをきれいにすることを徹底してきました。その結果が、現在のイエローハットをつくったのです。

●凡事徹底が商人の根幹
 天下に名をなす人物は、みな凡から出て、凡に徹しきっています。鍵山氏が座右の銘にしているという「凡事徹底」の四文字こそ商人道の根幹であり、運をつかむコツなのです。
 「10年偉大なり。20年畏(おそ)るべし。30年にして歴史なる。」という古人の言葉があります。どんな些細な小さなことでも10年も心を込めて続けるということは「偉大」なこと。それにもう10年加えて20年それを続けたとしたら、それは「おそるべき力」になる。そして、さらにもう10年続けて30年に至れば「歴史ともいえる力」になるのです。
 鍵山氏の掃除人生は、まさにこの言葉通りのものでした。些細なこと、何の見返りも求めずにやり続けることは、確かに至難(しなん)なことです。しかし、その至難なことをやり遂げたとき、初めて「歴史となる」のです。
 ましてや、鍵山氏はさらに10年を重ね、実に40年以上もそれを続けているのです。

●掃除ほど尊い事は他にない
 掃除の思想といえば、「祈りの経営」で知られるダスキン創業者の鈴木清一が思い浮かびます。彼は、およそ掃除ほど尊い仕事は他にないと言い切りました。
 なぜなら掃除をして、美しくして、他人を「いい気持ちだ」と喜ばせることのできる仕事は、昔から金儲けとしてではなく、修業として実践されてきたぐらいだからです。
 鈴木清一氏は、掃除は美しくする仕事であるが、そのなかでも一番大事なことは「心を美しくする」ことである。美しい心とは人間を幸福にする「心の豊かさ」を指します。
 「私たちは幸せだ。なぜならまず働けるという健康に恵まれている。しかも私たちがお掃除をすることによって、自分でもすぐその効果がはっきりわかる(汚れていたところが、ぐんぐんきれいになる)。こんなあざやかな働き甲斐のある仕事が他にあるだろうか」と、清掃の思想を広めました。
 サンレーグループにもクリーン30がありますが、清掃ほど自分の心を豊かにして、お客様をいい気持ちにさせるものはありません。ぜひ、施行施設はもちろん、各部署で大いに掃除に励んでください!

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     蔵と金とで こちら福々  庸軒