2009
04
株式会社サンレー

代表取締役社長

佐久間 庸和

「すべてがチェンジを求められている

 君たちも変わらなければならない」

●時代は若者が切りひらく

 今年も多くのフレッシュマンとフレッシュウーマンがサンレーグループに入社してきました。心より歓迎いたします。
 世間では「内定切り」などが話題になっていましたが、新入社員のみなさんは無事に当社に入社されて本当に良かったですね。わたしも、社長として嬉しいです。
 ぜひ、若いみなさんに、新しい時代のサンレーを創造していただきたい。新しい時代を創るのは、やはり若い力です。
 アメリカでは、若いオバマ大統領が誕生しましたが、選挙活動中のスローガンは「チェンジ」でした。まさに、「百年に一度の波」と呼ばれる深刻な不況の渦中にあって、アメリカという巨大国家そのものが変化しなくてはなりません。
 変化が求められるのは、アメリカという国家だけではありません。アメリカで発達した強欲資本主義、キリスト教やイスラム教に代表される宗教衝突、黒人に代表されるマイノリティを差別する格差社会。オバマ大統領が、それらすべてに「チェンジ」をもたらしてくれることを願っています。

●自分が新しくなっていく

 時代は常に変化します。今から2500年前にブッダは「諸行無常」を説きました。また、時を同じくしてギリシャの哲学者ヘラクレイトスは「万物はすべて流転する。太陽ですらも、今日の太陽はもはや昨日の太陽ではない」と喝破(かっぱ)しています。
 さらに時代を遡れば、中国古代の殷(いん)王朝を開いた湯王(とうおう)は孔子も賛美した名君ですが、彼が沐浴に使った器には「苟(まこと)に日に新たにして、日日に新た、又日に新たなり」という言葉が彫ってあったといいます。「日に新た」ということを心がけ実践していくことが大切で、本当にそれを行なえば次々と自分が新しくなっていくという意味です。
 「マネジメント」を成り立たせているものとして「マーケティング」と「イノベーション」があります。マーケティングとは「時代の変化を読むこと」、そしてイノベーションとは「時代の変化を起こすこと」だと言えるでしょう。もちろん、どちらも重要です。

●マーケッターとして勝海舟

 現代の日本は、幕末以来の時代の激変期だと言えるでしょう。
 幕末の勝海舟は、時代の変化を的確に読める人間でした。若い頃から剣術を鍛えるとともに蘭学にも親しみ、長崎海軍操練所で航海術と砲術を学びました。そして、これからの時代にはすみやかに諸外国と交流してその文化を吸収し、日本を強い国に育てるのがよいと考えていました。
 ペリーが来航した際、幕府に対して開国すべしという意見書を提出したりしたので、攘夷(じょうい)派から命を狙われることになりました。実際、坂本龍馬が海舟を暗殺しに来ましたが、逆に説き伏せて弟子にしてしまいました。
 その後、咸臨(かんりん)丸の艦長として使節団を成功に導いたことで幕府内でも強い発言権を持つようになり、幕府の軍艦奉行に任命され神戸海軍操練所の建設に乗り出しました。
 徳川慶喜(よしのぶ)が鳥羽・伏見の戦いで敗れて江戸へ戻ってからは、旧幕府連立政権の陸軍総裁となり、新政府軍の江戸城攻撃の前日に西郷隆盛と会談を行い、江戸城を無血開城に導いたとされます。

●イノベーターとしての坂本龍馬

 海舟の弟子となった龍馬も、時代の変化に敏感でした。彼が友人と行き会うたびに、長い刀、短い刀、ピストル、万国公法の法律書というように、持ち物を変えていたというエピソードは有名です。
 古い武器から新しい武器、新しい武器から法律あるいは民主主義へと、変化のシンボルを常に求めながら、龍馬自身の自己変革を告げました。
 「彼は昨日の彼ならず」という言葉がありますが、今日の龍馬は昨日の龍馬ではなかったのです。彼にとっては、明日になれば今日は即昨日に変わりました。つまり、龍馬は「日々新たなり」の言葉通り、自己を果てしなく変革していったのです。
 自己変革とは、脱皮に告ぐ脱皮の行為です。彼は昨日の自己に何の未練も持たなかったし、捨てても惜しいとは思いませんでした。この連続性のある脱皮精神こそが龍馬を「龍馬」たらしめたのです。
 坂本龍馬は2000年前の中国の思想家が口々に唱えた「社会を変革する者は、まず自己の変革者でなければならない」という言葉を、そのまま実践したのです。自己の変革者こそが、イノベーションを起こせる存在なのです。

●社会人への変化

 最後に、新入社員のみなさんに一言。
 何より変化しなければならないのは、みなさん自身です。社会や会社を変化させる前に、まず、あなた方が変わらなければならない。
 みなさんは、これまで授業料というお金を親に払ってもらって勉強していました。しかし、これからは会社が給料というお金を払います。当然ながら責任感が求められます。
 「新」という漢字は「親」と語源が同じそうです。何かを新しく変化させる場合、それに親しむことができて、はじめて深く理解し、新しくすることができるのです。ですから、まずはこの会社に親しんでください。上司や先輩に親しんでください。そして、企業風土や企業文化に親しんでください。
 そのうえで、「これではいけない」「ここの部分は変えないといけない」と思ったら、大いに行動に移してください。社会人へのチェンジリングを果たした若いみなさんが、新しいサンレーを創造してくれますように。 
 
 新しき時代をひらく始まりは
    おのれを変えることと知るべし  庸軒