2009
06
株式会社サンレー

代表取締役社長

佐久間 庸和

「何が本当の貧困だろうか?

 こころの大富豪になろう! 」

●空前の大貧困社会

 アメリカ発の未曾有の大不況は、いまだ尾を引いています。この影響で日本社会における「格差と貧困」がより一層深刻化しています。まじめに働いて年収が200万円に満たない「ワーキングプア」、住む場所のない「ネットカフェ難民」、5件以上の債務に苦しむ「多重債務者」、さらには「生活保護受給者」、「ホームレス」の数も増加する一方です。
 その一方で急増する貧困層を食い物にして設けるビジネス、すなわち「貧困ビジネス」が盛んになっています。
 たとえば、「敷金・礼金なし」で貧困層を誘い込み、ほんの数日の家賃滞納で法外な違約金を請求する「ゼロゼロ物件」。たとえば、多重債務者にニセの養子縁組をさせてさらに借金を重ねさせる「リセット屋」。
 あるいは、交通事故にあったように見せかけ相手から示談金をだまし取ったり、割れた陶器を袋に入れたうえで故意に通行人にぶつかり弁償金を請求する「当たり屋」も増加しているとか。貧困に追い詰められた「タクシー強盗」も同様に増えています。

●人間関係と貧困

 いったい、日本はどうしてしまったのでしょうか。「千の風になって」や「おくりびと」や『悼む人』などのブームでハートフル・ソサエティの到来が加速する一方、貧困ゆえのハートレス・ソサエティが同時進行しています。
 すべては、「人間関係」の問題にあるような気がします。ネットカフェに毎日宿泊するよりも、友人を作って数人でアパートをシェアしたほうがずっと安くつく。
 借金といえば、昔はまずは親や親戚に頭を下げ、それでも無理な場合のみサラ金に頼ったものでした。
 それが今や、友人を見つけるよりもネットカフェに引きこもったほうがいい、親や親戚に頭を下げる前にサラ金から金を借りる...わずらわしい人間関係に直面するよりは、目先の便利さに飛びつく。そして、さらに泥沼にはまって貧困に溺れるわけです。
 「ゆたかな人間関係は最高の贅沢である」とはわたしの口癖ですが、逆に「まずしい人間関係は貧困への入口である」というのも真理なのです。

●貧困の悪循環を断つ

 なぜ貧困なのか。なぜ貧困から抜け出せないのかを考えなくてはいけません。
 「貧困の悪循環」という言葉を聞いたことがあると思います。たとえば、きわめて貧しい家庭の子どもを想像してみましょう。
 貧困生活にある子どもは、十分な栄養が取れず飢餓や栄養失調に直面する。すると、病気にかかりやすくなり、学校を休みがちになる。学校を休みがちになると、読み、書き、計算といった基本技能が身につかない。基本技能がないために、就職が困難となり失業する。失業すると収入が不足し、低収入となり、貧困生活となる。
 このように、貧困→飢餓→栄養失調→病気→学校に行かない→基本的技能が身につかない→職がない→低収入→貧困...というように、厄介なネガティブ・サイクルが作動するのです。
 この悪循環の環を断ち切るには、どうすればよいのか。二宮金次郎の例が特に有名ですが、洋の東西を問わず、貧困から脱して偉人となった人は、とにかく勉強したことがわかります。勤勉こそ、貧困に対する最大の処方箋なのですね。
 それは、個人のみならず、法人、つまり企業においても当てはまるように思います。

●自分の仕事にプライドを持つ

 さて、もっとも心の貧しい人とは、どういう人か。わたしは、自分の職業にコンプレックスを抱いている人だと思います。仕事をする上でもっとも大切なのは、自分の職業に対する使命感とプライドです。
 互助会営業によって隣人の関係を良くする「となりびと」、新郎新婦の魂を結びつける「むすびびと」、そして、故人の魂を天国に送る「おくりびと」。わたしたちの仕事は、これ以上ないほど価値のある素晴らしい仕事です。
 戦後の貧しい時代に冠婚葬祭互助会は急成長しました。国民がみな、結婚式や葬儀のための資金がなくて大きな不安を感じていたからです。今また、娘の結婚式や親の葬儀に金銭的な不安を感じている方は多いはずです。
 いくらお金がないからといって、親が亡くなっても葬儀を挙げないのでは「人の道」から外れてしまいます。「人間失格」になるような気の毒な方をつくらないためにも、互助会の社会的使命は大きいのです。わたしたちは、いつも貧しい方々の味方であるべきです。

●こころの大富豪になろう!

 ぜひ、みなさんは仕事に大いに誇りを持って下さい。そこから、すべては好転します。
 かつて、「士農工商」という身分制度があった時代、商業は社会の最底辺の仕事でした。しかし、幕末の坂本龍馬や渋沢栄一は「商」に価値を認め、社会的地位を高めてきました。
 わたしたちも、ぜひ誇りをもって、冠婚葬祭互助会というビジネスの社会的地位を高めていこうではありませんか! 
 水前寺清子の「いっぽんどっこの唄」は、「ぼろは着てても心の錦、どんな花より綺麗だぜぇ~」という歌詞から始まります。最後の歌詞は、「人のできないことをやれ」です。自分の職業に誇りを持っている人はこころの大富豪であり、人のできないことがやれる人だと思います。さあ、背筋を伸ばして胸を張りましょう!

  貧しくも背筋を伸ばせ胸を張れ
       ぼろは着てても心は錦  庸軒