2012
04
株式会社サンレー

代表取締役社長

佐久間 庸和

「人間尊重をめざして

 サンレーグループは礼業だ!」

新入社員を迎えて

 4月2日は入社式が行われました。
 今年もフレッシュな新入社員たちがサンレーグループに入社してきました。心より歓迎いたします。この時期を迎えるたびに、わたしも社長として身の引き締まる思いがします。
 新入社員のみなさんの胸には、期待とともに不安もあることでしょう。みなさんは、これまで学生として授業料というお金を払って勉強していました。しかし、これからは会社が給料というお金を払います。
 お金を貰いながら勉強するわけですから、とても恵まれています。世間では、働きたくても働けない人もたくさんいます。また、わが社への入社も、みなさんは大変な倍率の競争をくぐり抜けてきたわけです。
 ぜひ、恵まれた環境を活かして、貪欲に色々なことを吸収していただきたいと思います。

サンレーは「礼業」の会社

 みなさんは、「サンレーは何の会社ですか」と聞かれたら、どのように答えますか。
 多くの人は「冠婚葬祭の会社です」と答えることでしょう。でも、サンレーは結婚式や葬儀のお手伝いだけでなく、婚活支援サービスやグリーフケア・サポートも行っています。ホテルも経営していますし、隣人祭りも多数開催しています。そして今年からは、いよいよ高齢者介護事業に進出しました。  それらの事業はすべて「人間尊重」をコンセプトとしています。そして「人間尊重」をひとことで言うと「礼」ということになるでしょう。そうです、サンレーとは「礼」の実践を業(なりわい)とする「礼業」なのです。
 世の中には農業、林業、漁業、工業、商業といった産業がありますが、わが社の関わっている領域は「礼業」です。「礼業」とは「人間尊重業」であり、「ホスピタリティ・インダストリー」の別名でもあります。

「礼」とは「ハートフル」である

 さらに、「礼」の意味について考えたいと思います。「礼」は儒教の真髄ともいえる思想です。それは、後世、儒教が「礼教」と称されたことからもわかります。
 そもそも「礼(禮)」という字は、「示」と「豊」とから成っています。「示」は「神」という意味で、「豊」は「酒を入れた器」という意味があるそうです。つまり、酒器を神に供える宗教的な儀式を意味します。古代には、神のような神秘力のあるものに対する禁忌の観念があったので、きちんと定まった手続きや儀礼が必要とされました。これが、「礼」の起源であると言われています。
 ところが、もう一つ、「礼」には意味があります。「示」は「心」であり、「豊」はそのままで「ゆたか」だというのです。ということは、「礼」とは「心ゆたか」であり、「ハートフル」ということになります。「ハートフル」はわたしの造語として流行しましたが、なんと「礼」という意味だったのです。

変質した「礼」の観念

 もともとの「礼」の観念が変質し、拡大していくのは、春秋・戦国時代からです。
 「礼」の宗教性は希薄となり、もっぱら人間が社会で生きていく上で守るべき規範として、「礼」は重んじられるようになりました。
 『論語』にも「礼」への言及は多く、このことからも孔子の時代には、「礼」は儒家を中心によく学ばれていたことがわかります。
 そして、もともとの「礼」である「集団の礼」や「社会的な礼」とともに、徳の一つとして「個人的な礼」も実践されるようになりました。
 孔子の門人たちにとって、「礼」を修得しなければ教養人として自立したことにはならないとされ、冠婚葬祭などのそれぞれの状況における立ち居ふるまいも重要視されるようになったのです。
 いずれにしろ、孔子にはじまる儒家は「礼」の思想にもとづく秩序ある社会の実現をめざしていました。

「礼」を重んじる

 「礼」の重要性を説いた日本人に陽明学者の安岡正篤がいます。彼は、「本当の人間尊重は礼をすることだ。お互いに礼をする、すべてはそこから始まるのでなければならない。お互いに狎れ、お互いに侮り、お互いに軽んじて、何が人間尊重であるか」と言いました。
 「経営の神様」といわれた松下幸之助も、何より「礼」を重んじました。彼は、世界中すべての国民民族が、言葉は違うがみな同じように礼を言い、挨拶をすることを不思議に思いながらも、それを人間としての自然の姿、人間的行為であるとしました。すなわち「礼」とは「人の道」であるとしたのです。
 無限といってよいほどの生命の中から人間として誕生したこと、そして万物の存在のおかげで自分が生きていることを思うところから、おのずと感謝の気持ち、「礼」の身持ちを持たなければならないと人間は感じたのではないかと松下幸之助は考えました。

サンレーのミッションとは 

 わが社においても「礼」をすべての基本とし、大ミッションには「人間尊重」を掲げています。もともと冠婚葬祭を業とする会社ですから当然といえば当然ですが、さらに創業者である佐久間会長が小笠原流礼法の伝統を受け継ぐ「実践礼道・小笠原流」の宗家であり、挨拶・お辞儀・電話の応対・お茶出し・お見送りにいたるまで、社員へのマナー教育は徹底に徹底を重ねています。
 「礼」の考え方を世に広めることを「天下布礼」といいます。わが社は1966年の創業時から、「天下布礼」の旗を掲げてきました。本業の冠婚葬祭以外にもさまざまな活動に取り組んでいますが、それらはすべて人間関係を良くする、あるいは「有縁社会」を再生する試みなのです。
 この春、たくさんの新しい仲間を得て、サンレーグループは、これからも「天下布礼」をめざして歩んでいきます。

 わが社をば何の会社と人(ひと)問(と)はば
     礼の社(やしろ)と胸を張るべし  庸軒