2017
02
株式会社サンレー

 代表取締役社長

  佐久間庸和

「北九州の成人式を変える

 儀式で世直しをしよう!」

●北九州市の成人式へ

 儀式なくして人生なし。先月は成人式がありましたが、わが社の冠婚各部署は大いに賑わいました。1月8日には、北九州市の成人式が開催されました。会場は小倉北区の北九州メディアドームです。
 わたしは来賓として招待されており、参加してきました。じつは今年の北九州市成人式は、わがサンレーがサポートしています。
 今年の成人式の開催テーマは「夢に向かって」でした。行事は式典とアトラクションの2部構成になっていました。最初の式典では、ヴォーカルアンサンブルグループのtutti(トゥッティ)による「国歌斉唱」、北九州市の北橋健治市長による「主催者あいさつ」、北九州市議会の戸町武弘議長による「来賓あいさつ」がありました。
 予想していたのとはまったく違い、会場内の新成人たちはみな静聴していました。じつは、会場に入る前は「儀式を壊す者がいたら、俺が許さん!」と構えていたのですが、杞憂でした。

●感謝の心を表わす場

 それから、今回の成人式の実行委員会のみなさんが紹介されました。ステージに一同に並ぶと、好印象の若者ばかりです。そして「新成人・感謝のことば」として、男女二人の新成人が決意と両親への感謝の言葉を述べました。女性の新成人は「これまで両親は自分の悩みには、自分以上に悩んでくれ、嬉しいことがあると自分よりもずっと喜んでくれました。本当にいくら感謝しても感謝しきれません」と述べました。わたしはそれを聴いて、思わず涙ぐんでしまいました。成人式に限らず、結婚式でも葬儀でも、通過儀礼というのはすべて「感謝」の心を表わす場なのです。
 今年の北九州市の成人式は新たな取組みとしての「お祝いプロジェクト」が用意されていました。新成人の実行委員が主体となって、生まれ育ったまちに感謝の気持ちを込めて、「まちに感謝!おそうじ大作戦」を実施することになっていました。

●おそうじ大作戦

 成人式終了後、新成人たちは三萩野公園など会場周辺の清掃活動を行いました。新成人へは、案内はがき、ツイッター等で呼びかけを実施。ポップなデザインのゴミ袋を支給しました。このゴミ袋はすべてわが社の提供によるものです。
 ブルーのゴミ袋の表には「Clean Action」「I can!」「POWER TO NEXT GENERATION」と書かれ、裏にはサンレー 松柏園ホテル 紫雲閣」と書かれています。
 昨年1月、北九州市の成人式の様子がいくつかのテレビ局のワイドショーを通じて全国に流されました。金銀の羽織袴や花魁のようなド派手な着物姿で傍若無人に振る舞う新成人。北九州市といえば近年、暴力団の発砲事件が相次ぎ、市を挙げた安全・安心な町づくりの運動が実を結び、やっと沈静化して観光客も増えてきました。そんな中、暴れる新成人の姿が全国に発信されるのは、北九州市にとって大きなイメージダウンとなります。
 市は新成人に対して「きちんとした服装での参加を」と異例の呼びかけまでしましたが、騒動は繰り返されました。

●沖縄の成功事例

 わが社は北九州市に本社を置いています。儀式サービスの提供を行う「礼業」であるわが社にとっても、北九州の下品な成人式は恥ずべきことだと思いました。
 そこで、わたしは地元の成人式の正常化へ全面的に協力したいと、式典が終わった直後に市の青少年課に申し上げたのです。あれから1年。市から要望があり、わが社は今年の成人式に合わせて独自にゴミ袋を製作し、5000枚を寄贈しました。新成人が式典後に会場周辺で取り組むプロジェクト「おそうじ大作戦」に協賛したのです。
 これには伏線があります。しばらく前に「荒れる成人式」として全国に知られた沖縄では、新成人による「ごみ拾い」が始まったことを機に、成人式の様子が全国に発信されなくなりました。心ある新成人たちの勇気ある行動がすべてを良き方向に変えたのです。当時の清掃活動を主導した多和田君という若者は、今わが社の沖縄本部の正社員として働いています。

●成人式を変える

 今回、沖縄の成人式正常化の取り組みに学びたいという北九州市の要請がありました。それで、北九州市の職員の方々と多和田君との面談の機会を設けたりして、このプロジェクトに参加してきたのでした。
 当日は、朝から雨天のために「おそうじ大作戦」は中止になるかと心配しましたが、式典の開始直前には雨が上がりました。式典終了後には、例年のように会場前の広場でヤンチャな新成人たちが騒ぎ始めました。
 わたしは「天下布礼」の幟を持って徘徊したのですが、服装は派手でも顔を見ると気の良さそうな若者ばかりでした。彼らもピンクのネクタイに白いマフラーをしたオッサンが幟を持ってウロウロしているので、ギョッとしたのではないでしょうか。
 わたしは北九州のど派手な新成人たちを微笑ましく眺めながら、「これは仮装大会のようなもので、ハロウィンと同じだな」と思いました。かわいいもんです。
 一方で、心ある若者たちは「まちに感謝!おそうじ大作戦」スタッフの呼びかけに応えて、続々とゴミ袋を持って清掃を始めました。その姿を見たマスコミはど派手な連中から離れて、清掃する新成人の姿をカメラで追い始めました。わたしは、「これで北九州の成人式は変わる」という確信を持ちました。沖縄から北九州へ、荒れる日本の成人式はサンレーが変えます!

 成人の儀式あらたに甦る
    天下布礼の意地を見せたり   庸軒