2018
3
株式会社サンレー

 代表取締役社長

  佐久間庸和

創業以来空前の好業績

  知行合一でさらなる前進を!

●『唯葬論』レポート
 いま、サンレーは絶好調です。特に紫雲閣部門の業績が良い。本社と一体になっている小倉紫雲閣などは昨年12月に過去最高の業績を出しましたが、今年になって1月、2月とさらに記録を更新しています。
 他の事業部も軒並み新記録を出しています。第2創業期に入ったとたんの好業績、本当にありがたいことです。どの紫雲閣も忙しかったわけですが、そんな中、わが社の1級葬祭ディレクターのみなさんは『唯葬論』文庫版を読んで感想レポートを書いてくれました。
 葬送と儀礼について考察を重ねた同書は、「宇宙論」から「人間論」、「文明論」「他界論」までの全18章からなる本ですが、事前に「あなたは、どの章が最も印象に残ったか。また、その理由は何か」という質問をした上で、その解答をレポートとして書いてもらいました。わたしは、そのすべてに目を通しましたが、葬儀に対する深い見識、仕事への誇り、グリーフケアへの想いなどが書きつらねられており、また非常に知的な内容でしたので、たいへん感銘を受けました。

●ドラッカーが唱えた「知識社会」
 2001年に社長に就任して以来、わたしは「知識」の重要さを訴えてきました。 
 イノベーションの前提こそ「知識」であると言っていいかもしれません。わたしがリスペクトする経営学者ピーター・ドラッカーが幾多の著書で一貫して唱えてきたのが「知識社会」の到来です。7000年前、人類は技能を発見しました。その後、技能が道具を生み、才能のない普通の者に優れた仕事をさせ、世代を超えていく進歩を可能にしました。技能が労働の分業をもたらし、経済的な成果を可能にしたのです。
 紀元前2000年には、地中海東部の灌漑文明が、社会、政治、経済のための機関と、職業と、ついに200年前までそのまま使い続けることになった道具のほとんどを生み出しました。まさに技能の発見が文明をつくり出したのです。そして今日、再び人類は大きな発展を遂げました。仕事に知識を使いはじめたのです。ドラッカーは、仕事の基盤が知識に移ったと述べています。

●専門知識とは何か
 ここで言う知識とは、仕事の基になる専門知識のことです。ドラッカーも、「いかなる知識も、他の知識より上位にあることはない。知識の位置づけは、それぞれの知識に固有の優位性や劣位性によってではなく、共通の任務に対する貢献によって決定される。『哲学は科学の女王』と言う。だが腎臓結石の除去には、論理学者よりも泌尿器専門医を必要とする」と述べています。
 専門知識の上に成り立つ職業といえば、医師や弁護士や公認会計士やコンピュータ・プログラマーなどがすぐ思い浮かびますね。
 しかし、じつは冠婚葬祭業である当社も知識産業であると、わたしは考えています。1級葬祭ディレクターの試験用に使う『葬儀概論』という電話帳のように分厚いテキストをわたしが最初に通読したときは驚きました。想像以上に内容が高度で、かつ範囲が広いです。
 これはもう大変な知識産業です。その1級葬祭ディレクターの人数が250人に迫ったということで、非常に誇りに思います。

●ラーニング・オーガニゼーション
 葬儀だけでなく、冠婚葬祭業界には、ブライダル・プロデューサー資格もあり、さらには、料理、衣装、写真、司会...と幅広い知識が求められます。わが社のあらゆる仕事は高度な専門知識に基づく知識産業なのです。ですから、わが社は知識の強化をすすめました。プロフェッショナルとしての専門知識を備えた知識労働者が、価値の創造としてのイノベーションを呼び込むのです。  
 これからも、アマチュアであるお客様のはるか先を行くプロフェショナルとしての高い専門知識を身につけるべく、わが社は学習する組織「ラーニング・オーガニゼーション」をめざしたいと思っています。  
 さて、現在放映中のNHK大河ドラマ「西郷どん」の主人公である西郷隆盛の思想的バックボーンは吉田松陰と同じ陽明学でした。その陽明学(心学)を開いた明の王陽明は、本当に知るということは創造することであるとして、「知は行の始めなり。行は知の始めなり」と説きました。
 「知」というものは行ないの始めであり、「行」というものは「知」の完成です。これが1つの大きな循環関係をなすのです。

●「知行合一」をもとめて
 陽明は有名な「知行合一」を唱えました。未来に向かっての行動の決定に対しては、人間が学としてとらえられる、言語化された知だけでは不十分です。禅で教える「不立文字」のごとく、個々の専門家がスペシャリストとしての経験を活かして、人間の能力全体としてとらえた言語化されない知、つまり「暗黙知」を加え、知行合一として奥行きを究めることが重要であるというのです。  
 マネジメントにおいては、個々のリーダーは、この言語化された知を学んだ上に、日々の苦労や経験からつかんでいる暗黙知を加えて、自分なりのリーダーシップを構築することが求められます。
 そして、何よりも実行が大切です。
 ビジョンもある。戦略もある。人材もいる。にもかかわらず、成果が上がらないのはなぜなのか。それは、企業や組織に実行の文化が根づいていないからです。
 「実行は細かい現場の仕事であり、リーダーの威厳にふさわしくないものだ。リーダーはもっと大きな問題に力を注ぐべきだ」という考え方は完全に間違っています。実行とは、リーダーおよびスタッフの最大の仕事なのであり、企業文化の中核をなさなければならないのです。

 今よりも上をめざして学ぶなら
        知行合一もとめて行かん  庸軒