2002
11
株式会社サンレー

 代表取締役社長

  佐久間 庸和

「サンレー愛をもって、

 お客様に最高の真実の瞬間を!」

 みなさんは、「真実の瞬間」という言葉をご存じですか?
 スカンジナビア航空(SAS)のヤン・カールセン社長が説いた言葉で、彼は同名の本も書いています。私はずいぶん前にその本を読み、彼の考え方に共鳴していましたが、最近また全互連のセミナーで「真実の瞬間」が取り上げられていたので、みなさんにも紹介したいと思います。
  「真実の瞬間」とは、自社のサービス品質が、お客様に評価される決定的瞬間のことです。1985年ヤン・カールセンが、社長として赤字の続くSASの立て直しに入った時、サービスの向上がなければ生き残れないことを感じ、すべての従業員に「真実の瞬間」という言葉を説きました。きっかけは、彼がSASで機内食のサービスを受けた時、汚れた皿が一枚あるのを見つけたことでした。彼は汚れた皿を見ているうちに嫌な気分になり、「この飛行機はエンジンの整備もいいかげんなのではないか」と思い、そこから「もしかすると、この飛行機は墜落するのでは」と非常に不安な気分になりました。
 予約電話をとった時、チケットカウンターで発券する際、廊下ですれ違った時、食事を出した時などなど、一日5万回以上お客様と航空会社の誰かが接触する瞬間、すなわち真実の瞬間があります。その時、その会社のサービスの品質がお客様に伝わり、瞬時に評価される、決定的な瞬間なのです。
 一回でも冴えない瞬間があったら、サービスの評価は冴えないものになる。お客様を失うことにさえなります。逆に、素晴らしい瞬間を提供すれば、一生お客様の記憶に残る感動が生みだされ、その後もその会社のファンになっていただけることもあるのです。支店や営業所で、空港カウンターで、電話での応対で、そして機内で、みんなが真実の瞬間を意識するようになり、自分の接客サービスの重要性を認識するようになりました。SAS社はその結果、奇跡的によみがえり、ヨーロッパでナンバーワンのサービスを誇る黒字会社となったのです。
 顧客満足とは、一回一回の真実の瞬間の積み重ねの結果です。ミスは許されません。真実の瞬間の公式は、100−1=0 なのです。決して99ではないのです。ですから、ホスピタリティ・サービスという仕事は、本当に奥深く、プロフェッショナルな仕事なのです。
 サンレーグループの真実の瞬間は、みなさんが作りだしています。司会者がお客様と打ち合わせもなく行き当たりばったりで本番に臨んだり、ホワイトボードのペンのインクが切れていたりするのも真実の瞬間です。その場合、お客様を失うことは確実です。また、期待以上のサービスを受け、最高の結婚式や葬儀を行なうことができたとお客様に感謝の言葉をいただくのも真実の瞬間です。ぜひ、素晴らしい真実の瞬間を作り続け、お客様に最高の満足を提供しましょう。
 最後に、私は巨人ファンですが、めでたく日本シリーズで宿敵・西武に四タテを食わせ、優勝しました。原新監督は、当初長嶋茂雄というカリスマの後任ということで線の細さが指摘され、不安視されていましたが、結果を見れば新人監督として前代未聞の偉業を達成したわけです。私は原新監督誕生と同時期に社長に就任したことから、彼に戦友意識のようなものを持っているのですが、彼は監督就任以来一貫して全選手に「ジャイアンツ愛」という言葉を説いてきました。
 なによりも原さん自身がジャイアンツを深く愛しているからこそ出た言葉でしょうが、巨人快挙の大きな原動力となりました。自分のチームに対して愛があるからプライドや勇気が生まれ、最高のプレーができるのです。
 私たちも、ぜひ「サンレー愛」を持ちましょう。そして、サンレーグループの一員であることに誇りを抱いて、それぞれの業務において高レベルのスキルを発揮し、お客様に最高の真実の瞬間を提供しようではありませんか!