2002
12
株式会社サンレー

 代表取締役社長

  佐久間 庸和

「冠婚葬祭業は実践心理学

 EQカンパニーをめざせ!」

 IQ(知能指数)ならぬEQ(感情指数)という言葉をご存じの方も多いと思います。EQは「心の知能指数」とも呼ばれ、自分の感情をコントロールでき、相手の感情も敏感にくみ取れる能力のことです。
  「人の真の能力はIQではわからない。社会で成功するためにはIQよりもEQが大切」というEQ理論は、1990年にアメリカの二人の心理学者によって発表されました。
 日本では、95年に刊行されたダニエル・ゴールドマン著『EQ─こころの知能指数』がベストセラーになったことによって、一躍その名が広まりました。私はその頃、この本を読んでたいへん感銘を受け、当時の能力開発室課長で社員研修担当だった新井弘代さんにも一読をすすめたことを思い出します。
 EQとは、簡単にいうと、その人の感情の豊かさを示します。自分の気持ちをコントロールし、目標に向かって自分を奮い立たせるという内に対する能力と、他人の気持ちを察し、人間関係をうまく処理する対外的な能力など、エモーショナルな面での総合的な評価です。
 ゴールドマンによれば、「仕事の出来、不出来もこの二つによるところが大きい。世界的に有名な科学系シンクタンクで、仕事のできる社員と普通の社員を比べた場合、両者のIQに大差はなかった。しかしできる社員を調査すると、やる気もさることながら、日頃から仕事上重要な人や他の研究員と良好な人間関係を保つように心がけていた」ことが判明したのです。
 さて現在、互助会はどこも募集活動に苦労しているようですが、セールスにおける互助会の先輩業界はなんといっても生保、つまり生命保険会社でしょう。その生保に注目すべき人がいます。第一生命営業調査役の柴田和子さんという女性で、保険セールス日本一を連続20年以上も続け、ギネスブックにも掲載された方です。ある年など、たった一人で444億円(!)を売り上げたそうです。
 柴田さんはこの仕事を始めるにあたって、まず保険のことを徹底的に勉強したといいます。その結果、保険というものがいかに大切かが身にしみてわかったそうです。これがないと残された遺族はどうやって生活していけばいいのか......。柴田さんは言います。
  「保険がいかに大切なものか、私が心底思っていることを一生懸命説明するだけです」
 柴田さんは、顧客の家族構成を頭に入れていて、あらゆるケースを想定して保険の必要性を説きます。ふさわしい商品がない場合は、会社に掛け合って、その家族向けの商品を自分で設計するそうです。
  「私は常に正しいことをしているという確信がありますから、お客様に自信をもって保険をすすめることができます」
 彼女は大いなるミッション(使命)を自覚して誇りを持って仕事をしているわけですが、EQ検査の結果、非常にEQの高い方だとわかりました。彼女は、相手が何を求めているのかを的確に判断し、それにふさわしい答えを用意することができます。つまり、相手の感情を理解し、共感する能力に長けているのです。互助会の募集営業はもちろん、人間の心に直接触れる冠婚葬祭の施行サービスに携わる上で最も必要とされるのが、EQでしょう。ホテルをはじめとしたホスピタリティ・サービス全般にとってEQスキルは極めて重要です。
 営業やサービス部門だけでなく、管理部門にもEQが求められています。EQによって職場の人間関係を良くしなければなりません。それには、挨拶、返事、笑顔が大切です。朝、人から「おはようございます」と声をかけられても返さなかったり、部下が語りかけても無視したり、一日中、平家蟹のような不愉快な顔をして部下を威圧したりする上司は、EQゼロの「こころの貧乏人」です。こんな人は、明日にでも会社を辞めていただきたい。
 冠婚葬祭業は実践心理学です。サンレーはEQカンパニーをめざしましょう!