2003
11
株式会社サンレー

 代表取締役社長

  佐久間 庸和

「前例のないイノベーションで

 グランドシティのモデルづくりを」

 北陸最大級の葬祭会館「小松紫雲閣」が新しい姿になってオープンしました。オープンイベントとして、落語をはじめとしたさまざまな企画が用意されています。小松地区の高齢者の方々にたいへん喜ばれているようです。
 北九州における「大葬祭博」、それを継承した「サンクス・フェスタ」、それに「松竹大観劇会」など、サンレーはもともと会員用のイベント、それも高齢者向けのイベントが得意であると業界でも知られています。せいぜいゲートボール大会くらいしか思いつかないこの業界で、サンレーが企画するイベントはどれも個性的で費用対効果も高いということで、他社からの研究の対象となっているのです。「シルバーカラオケ大会」などはその最たる例で、大手生命保険会社からも注目されているほどです。
 互助会に入れたらそれで終わり、後は施行の発生を待つだけという「待ち」の姿勢ではもう通用しません。結婚式や葬儀というものは、そうそう一つの世帯にひんぱんに発生するものではないのです。一世帯における冠婚葬祭の発生サイクルはだいたい20年くらいといいますが、そのあいだに、互助会に入会していたことを忘れたり、他社で施行した後に思い出すといったことが起こるわけです。ですからイベントというのは、会員様に対して「あなたはサンレーの会員ですよ」という確認をする行為に他なりません。同様のことは、会員情報誌「ハートライフ」の発行についても言えます。
 さて、施設のリニューアル・オープンが相次ぐサンレーですが、来年の2月には業界でも全国最大級のリニューアル・オープンが待っています。松柏園グランドホテル改め、サンレーグランドホテルの誕生です。これは世界でもまったく例のない「高齢者複合施設」というべきものです。
 日本は世界一の高齢化国ですが、その日本の13ある政令指定都市のなかでは北九州市が最も高齢化が進行しています。つまり、北九州市は世界一の超高齢化都市なのです。でも、どうも北九州市民のあいだには高齢者が多いことを恥じたり、高齢化が進行することをネガティブにとらえる空気があります。
 今の日本は史上稀に見る「嫌老好若社会」です。多くの人々が「老い」は醜く「若さ」は格好いいと思っているから、80代の政治家が「ぼくはジーパンをはいてディスコにも行く」などと、みっともないことを言って得意になっているのです。
 しかし若さを好むのは、実は近代工業社会に特有の現象にすぎません。近代工業社会は「物財の供給増加こそ人間の幸せ」と考え、次々に新しい技術を導入し、規格大量生産を完成させました。そのため、経験や蓄積よりも、素早く反応できる運動神経、長時間労働に耐えられる力、新しい技術を速やかに覚えなじむ記憶力が重視されたのです。それには若いほうが都合がいいのです。
 加えて、個性のない規格品を大量に生産するため、モノに対する愛着が湧かず、使い捨ての習慣が拡がりました。そこでは若くない高齢者はゴミや廃品扱いされ、使い捨てにされたのです。つまり、人もモノも新しいほうがいいというのが近代工業社会でした。
 さらに近代工業社会で若さが好まれ、老いが嫌われたもう一つの理由は、人口増加でした。若い勤労者が数多く出る人口構造になっていたため、高齢者は早期に引退し、若者に職場と財産を譲るべきだと考えられていたのです。
 しかし、もともと東洋には「年長尊敬」という伝統があり、尊敬する人には、実際の年齢にもかかわらず「先生」と呼びました。禅の師は若くても「老師」と呼び、相撲は「年寄」と呼びました。町や同業の世話役も「年寄」と呼ばれ、大名の重臣は「家老」、幕府の高位者は「老中」、さらに偉くなると「大老」です。
 世界一の高齢化国である日本は、「好老社会」とならねばなりません。そうでないと、何千万人もいる高齢者がそのまま不幸な人々となってしまいます。そして日本が「好老社会」となるには、日本一の高齢都市である北九州市がまず「好老都市」とならねばならない。私は「好老都市」のことを「グランドシティ」と呼んでいます。シティ・オブ・グランドファザーズ・アンド・グランドファザーズという意味です。グランドシティは、大いなる好老都市なのです。そして、そのグランドシティのモデルこそが、来春オープンするサンレーグランドホテルなのです。
 サンレーグランドホテルには、日本最大の葬祭施設「北九州紫雲閣」をはじめとしてスポーツクラブ、カルチャーセンター、宗教美術の展示やイベントの会場となる「宗遊館」、衣裳店、写真スタジオ、美容院、法事法要会場、霊園販売、仏壇仏具ショップなどが入っています。また、高齢者に楽しんでいただける施設としてリラクゼーションスペース(スパ&マッサージ)、カラオケルーム、シアタールーム、囲碁・将棋サロン、それに図書館などをご利用いただけます。
 さらに、「よろず相談センター」を設け、葬儀に関するあらゆる手続き、法律、税務、高額医療費の返還、医療、介護、健康法、宗教、旅行、リフォームに至るまであらゆる相談にお答えできるようにいたします。
 これらの新サービスは互助会会員のメンテナンスともなり、新会員獲得の強力な武器ともなる。まさに、互助会におけるまったく新しいビジネスモデルなのです。25年前に日本最初の葬祭会館である「小倉紫雲閣」をオープンさせてから四半世紀、サンレーが再び前例のないイノベーションに挑戦します。