2014
04
株式会社サンレー

代表取締役社長

佐久間庸和

「笑う門には和が来る

 和来で心を一つにしよう!」

●「孝」によって会社は発展する


 4月です。今年も多くのフレッシュマン、フレッシュウーマンが入社してきました。心より歓迎いたします。

 ぜひ、若いみなさんが、新しい時代のサンレーを創造していただきたい。新しい時代を創るのは、やはり若い力です。しかし、その一方で若いみなさんは先輩たちの言うことも素直に聞く必要があります。
 ベテランとルーキーの力が合わさってこそ、会社の発展があるのです。わたしは孔子の思想を学んでいますが、孔子が開いた儒教では「孝」というものを重視しました。「孝」は「老」と「子」という二つの文字から成っています。「老」すなわち先輩・長者と、「子」すなわち後進の若い者とが断絶することなく、連続して一つに結ぶという意味です。
 これは、企業繁栄のためには「継続」と「革新」の両方が必要であるといったドラッカーの考え方と完全に一致します。

 

 

●「和」がキーワード


 孔子が「老」としたものを、ドラッカーは「継続」と呼び、ITでは「初期設定」と呼び、わが社は「創業守礼」と呼びます。
 孔子が「子」としたものを、ドラッカーは「革新」と呼び、ITでは「アップデート」と呼び、わが社は「天下布礼」と呼びます。
 それでは、ベテランとルーキーが心を通わせ、「孝」というものを実現させるにはどうしたらいいか。そのキーワードは、ずばり「和」ではないかと思います。
 「和」は、日本文化を理解する上でのキーワードです。陽明学者の安岡正篤によれば、日本の歴史を見ると、日本には断層がないことがわかるといいます。文化的にも非常に渾然として融和しているのです。征服・被征服の関係においてもそう。諸外国の歴史を見ると

 征服者と被征服者との間には越えることのできない壁、断層がいまだにあります。しかし日本には、文化と文化の断層というものがありません。早い話が、天孫民族と出雲民族とを見てみると、もう非常に早くから融和してしまっています。

 

 

●和を以て貴しとなす


 「和」というコンセプトを最初に打ち出したのも孔子です。孔子は、自分と周囲の人々が健康で、お互いに尊重し合える関係は素晴らしいと考えました。そういう環境が整ってこそ、学問も人生もうまくいくからです。

 『論語』には次の言葉があります。
「有子が日(い)わく、礼の用は和を貴(とうと)しと為(な)す。先王の道も斯(こ)れを美と為(な)す。小大これに由(よ)るも行なわれざる所あり。和を知りて和すれども、礼を以ってこれを節せざれば、亦(ま)た行なわれず。」〈学而篇〉
「みんなが調和しているのが、いちばん良いことだ。過去の偉い王様も、それを心がけて国を治めていた。しかし、ただ仲が良いだけでは、うまくいくとはかぎらない。ときには、たがいの関係にきちんとけじめをつける必要もある。そのうえでの調和だ」という意味ですね。

 これは、聖徳太子の有名な「和を以て貴(とうと)しとなす」のルーツにもなった言葉です。日本を「大和(やまと)」と呼ぶように、「和」は日本人にとって最も大切なものとされます。

 

 

●若田さんと「和の心」


 今年の3月9日、日本人宇宙飛行士の若田光一さんが、国際宇宙ステーション(ISS)の新船長に就任しました。

 若田さんは前任のオレッグ・コトフ宇宙飛行士(ロシア)から引き継ぎを受け、第39代目のISS船長に就任。日本人としては初の快挙です。
 記者会見の場で、若田さんは「和の心を持って舵取りをしたい。チーム全員でいい仕事をできるように頑張っていきたい」と意気込みを述べました。就任後に3人が帰還し、現在滞在している飛行士は3人。広い船内でばらばらに作業することもあるため「夕食は3人で一緒にとるようにしている」と、チームの和を重視する若田流の運営を明かしました。
 わたしは、若田さんの船長就任記者会見をテレビで観ながら、しみじみと感動していました。本当に素晴らしいことです。
 宇宙飛行士としての若田さんの能力や人間性が高く評価されたのは当然ですが、これは日本人が国際的に信用される民族として認められたことにもなります。そして、日本人の根本精神こそは「和」の心です。

 

 

●「笑い」とは「和来」である!


 記者会見では、若い日本人記者から「船長の特権で何かしたいことはありますか? 例えば、食事のメニューを決定するとか、ベッドを大きくするとか?」といった能天気な質問が飛び出しました。それを聞いて一瞬きょとんとした表情をした若田さんは、次の瞬間、大笑いしました。まさに破顔一笑という感じでしたが、それから「食事のメニューを決められたらいいですけど、残念ながら、そんな権限が船長にはないんですよ」とニコニコしながら答えました。
 その笑い方の豪快なこと! また、その笑顔の魅力的なこと!
 わたしは一発で、若田さんの大ファンになりました。そして、その「笑い」と「笑顔」こそが彼の言う「和」の心に通じているのだと気づきました。「笑う門には福来る」という言葉がありますが、「笑う門には和が来る」でもあるのです。そう、「笑い」とは「和来(わらい)」ではないでしょうか。
 「和」は「わ」とも読みますが、「なごみ」とも読みます。人の上に立つ者にはユーモアが必要です。なぜなら、ユーモアは組織の雰囲気を和ませるからです。

 みなさんも大いにユーモアを発揮して、笑いの絶えない職場にして下さい。笑いと笑顔こそが職場の「和」を生むのです。

 

 

 笑いとは和を呼ぶしぐさ
     和が来れば みんな和んで福も来たれり  庸軒