2014
09
株式会社サンレー

代表取締役社長

佐久間庸和

「人類の未来を育む礎に

 冠婚葬祭業の使命を知ろう!」

●日経新聞の取材


 先日、「日本経済新聞」の取材を受けました。日本経済新聞社の編集局生活情報部の編集委員である嶋沢裕志さんがサンレー本社にお越しになり、貴賓室でお会いしました。
 嶋沢さんと初にお会いしたのは1994年で、じつに20年ぶりの再会です。嶋沢さんが北九州支局長から東京本社の経済解説部キャップへ異動され、お母さまが亡くなられた直後に、「エコノ探偵団」の取材で都内のオフィス(西麻布にあったハートピア計画)へ「宇宙葬」の話を聞きに来られたのです。当時、『ロマンティック・デス』(国書刊行会)を上梓した直後でした。
 先日、東京でエリジウム・スペース社のトーマス・シベ最高経営責任者(CEO)の来日記者会見が行われましたが、嶋沢さんも参加されたそうです。 
 そこでトーマスCEOの口から「一条真也氏の著書に影響を受けた」という発言が出て、たいそう驚かれたとか。そして、この日の取材と相成ったわけですが、本当に「縁は異なもの」という言葉が心に浮かびます。まさに、この世は有縁社会ですね。


●「こころのページ」


 日本経済新聞では、毎週土曜日付の夕刊で「こころのページ」というユニークなページが掲載されています。非常に人気の高いページだそうです。

 今回、わたしがインタビューをお受けしたのが、「こころのページ」の売り物である「トップインタビュー」(知識人に聞く)です。紙面の右半分を丸ごと、さまざまな分野で活躍されている人たちへのロングインタビューにあて、人生や家族、社会、政治、経済、文化、芸術、スポーツ、歴史、宗教、哲学、科学、自然など森羅万象について、読者に「考えるきっかけ」を提供することを狙っておられるとか。嶋沢さんは、これまで経営者の牛尾治朗氏、作家の椎名誠氏、女優の檀ふみ氏、宇宙飛行士の山崎直子氏といった方々をインタビューされ、記事を書かれています。

 わたしのインタビュー記事は、8月16日の夕刊に掲載されました。紙面には「人類の未来を育む礎に」の大見出しが躍り、さらに「有縁社会をつくる」「絆の大切さ再確認」の見出しが続きます。


●人類の滅亡を防ぐ


 わたしは、さまざまな話題を語りましたが、わたしの著書のタイトルでもある「葬式は必要!」についての発言が大きく取り上げられていました。あの本は、島田裕巳氏の『葬式は、要らない』に対する反論の書でした。

 確かに葬式仏教や檀家制度の綻び、葬儀業界の形式だけのサービスなど色々な制度疲労はあります。しかし、ネアンデルタール人が7万年も前から花の上に死者を置いて葬儀をしていたことがわかっています。配偶者や子供、家族が死ねば人の心にポッカリ穴が開き、きっと自殺の連鎖が起きたでしょう。

 葬儀という営みをやめれば、人が人でなくなります。葬儀というカタチは人類の滅亡を防ぐ知恵なのです。
 結婚式も同様で、結婚式があったからこそ、人類は結婚という営みを続けてきたという見方もできます。いわば、冠婚葬祭という文化装置が人類滅亡を防いできたのです。冠婚葬祭業に携わる者は大変な使命を担っており、ある意味で、スーパーマンやウルトラマンのような「正義の味方」と言えるかもしれません。


●儀式の本質を考える


 愛する人がいなくなった瞬間、異次元に陥ったように自分がどこにいるか、時間も場所もわからなくなります。そこで、儀式を通じて歪んだ時間と空間を1回壊し、生きるための新しい時間と空間を創る必要があります。
 儀式とは基本的に「面倒」なものですが、さまざまな人が参列して遺族を慰めてくれることが重要です。「面倒」の中にこそ、癒しと安全装置の本質があるように思います。
 葬儀だけでなく墓も重要です。墓が遠ければ次第に足も遠のいてしまいます。でも、故人をできるだけ多く思い出すことが大切です。
 墓不足も背景となっていますが、お寺などと組んで花や木々を墓標にした樹木葬、沖縄などの海に散骨する海洋葬、そして長年唱えてきた月面葬、いま話題の宇宙葬。
 わたしは、これらを4大メモリアル・イノベーションと考えています。これらは「山」「海」「月」「星」といった日本人の他界観を見事に反映しています。


●「慈礼」というもの


 現在行われている葬儀の中には、形式的で心がこもっていないものも多いように思います。わが社では、孔子の説く「礼」を信条とし、「天下布礼」に努めています。
 ただ、儒教の礼は形式主義に流れがちですが、ブッダの唱える生きとし生けるものへの「慈」も大切です。そこで「慈礼」と表現すれば、慈しみに基づく人間尊重の心を大事にした、魂に響く挨拶、お辞儀、笑顔、冠婚葬祭が可能になるのではないでしょうか。
 いま、日本は「無縁社会」などと呼ばれています。ぜひ、これを「「有縁社会」へと変えなければなりません。人間には、家族や親族の「血縁」をはじめ、地域の縁である「地縁」、学校や同窓生との「学縁」、職場の縁である「職縁」、業界の縁である「業縁」、趣味の縁である「好縁」、信仰やボランティアなどの「道縁」といったさまざまな縁があります。
 そして、それらすべての「縁」に関連しているものこそ、「冠婚葬祭」です。すべての「縁」という川は、「冠婚葬祭」という大河あるいは海に流れ込むのです。
 わたしも、これまで数多くの新聞や雑誌にインタビュー記事が掲載されましたが、今回の日経インタビューは全国版ということもあり、その反響の大きさには驚かされました。
 冠婚葬祭業は「有縁社会」を再構築する力を持っています。これからも、人類の未来を築く礎として頑張りましょう!



 人類の滅亡防ぐわれらこそ

         未来育む礎と知る  庸軒