2017
09
株式会社サンレー

 代表取締役社長

  佐久間庸和

ご先祖さまを大切にすれば、

 仕事も人生も好転する!

●お盆とお彼岸
 この8月のお盆には、みなさんはお墓参りに行きましたか。そして9月はお彼岸の季節です。20日に彼岸入り、23日が「秋分の日」で、26日が彼岸明けです。彼岸は浄土思想に由来します。
 阿弥陀如来が治める極楽浄土(西方浄土ともいう)は、西方の遥か彼方にあると考えられていました。そのため、真西に太陽が沈む春分・秋分の日は夕日が極楽浄土への「道しるべ」となると考えられていたのです。
 極楽浄土への道を「白道(びゃくどう)」といい、信じて進めば、必ず極楽浄土に至るという信仰が生まれ、現在に至っています。お彼岸は春分、秋分の日に当たり、昼夜の長さが等しくなることから釈迦の教えである偏りのない考え方「中道(ちゅうどう)」を表すとも言われています。本来の意味は、煩悩を脱した悟りの境地のことです。

●「おかげさまで」という考え方
 三途の川をはさんで、こちら側(人間)の世界を此岸(しがん)と呼び、向こう側(仏様)の世界を彼岸(ひがん)と呼びます。お彼岸の間、仏壇を美しく整え、花、供物を供え、線香、灯明をあげ、お参りします。お墓参りはお盆、春秋のお彼岸、故人の命日、正月などに行うのが一般的ですが、それ以外の日にもできるだけお参りするのが望ましいとされます。
 お墓参り、あるいは法要など、親戚一同が集まることで、人は一族という「つながり」を知るのです。社会の最小単位は家族であり、血縁です。それが脈々とつながっているのが、ご先祖さまです。
 おかげさまで、わが社は昨年11月18日に創立50周年を迎えることができました。この「おかげさま」の考え方こそが「先祖を思う」ことにつながると、わたしは考えています。ここに物事が好転する秘密があります。

●「おかげさま」とは何か
 「おかげさま」の語源・由来は、他人から受ける利益や恩恵を意味する「おかげ」。それに「様(さま)」をつけて、丁寧にしたものです。古くから「陰(かげ)」とは、神仏などの偉大なものの陰で、その庇護を受ける意味として使われています。
 これは、「御影(みかげ)」が「神霊」や「みたま」「死んだ人の姿や肖像」を意味することにも通じます。わたしたちは神や仏、あるいはご先祖さまという、見えない力によって支えられています。そのことを先人たちはきっと感じておられたのだと思います。だからこそ、ご先祖さまを敬い、「おかげさまで」と手を合わせてきたのです。
 ちなみに、神仏に手を合わせる際、「ご利益がありますように」と願う人を見かけますが、わたしは「ご利益」という言葉が好きではありません。なぜなら、それは「何かを得るために何かをする」という発想だからです。

●ご先祖さまに守られている
 「ご利益重視」は、「何も得るものがないなら行動しない」ということにつながってしまいます。それではいけません。だからわたしは、「利益」ではなく「感謝」という言葉を大切にしているのです。
 「おかげさま」という言葉で示される日本人の感謝の心の中には、自分という人間を自分であらしめてくれた、直接的かつ間接的な原因のすべてが含まれています。
 その中でも特に強く意識しているのが、自分をこの世に生みだす原因となった「ご先祖さま」です。
 日本人は古来、ご先祖さまの霊によって守られることによって初めて幸福な生活を送ることができると考えていました。神についての考え方は、それぞれの宗教や民族によって違います。
 でも先祖崇拝は、すべての宗教・民族に、ほぼ共通しています。というより、宗教や民族を超えたものだと思います。

●快適な生活は砂上の楼閣
 わたしたち日本人は高度な文明社会に生きています。それはとても快適な世界です。蛇口をひねれば清潔な水が出ますし、食材は冷蔵庫で保管でき、照明はわたしたちを暗闇の恐怖から解放してくれました。
 自動車という移動手段を持ち、冷暖房はわたしたちの生活から「暑さ」や「寒さ」を取り去ってくれました。
 こんなわたしたち日本人が当たり前だと思っている文明の力を、同時代で享受できない人たちがたくさんいます。
 そして、こうした快適な生活が一瞬にして奪われる可能性も知っています。
 たとえば、自然災害の発生がそうです。東日本大地震や熊本地震、九州北部豪雨などで、生活が瞬く間に一変する事実を、わたしたちは目のあたりにしました。快適な生活はまさに砂上の楼閣というか、じつに危ういものであることを痛感しました。

●先祖と子孫を意識して生きる
 災害に遭われた方が、お墓参りに行き、墓前で「幸い、わたしたちは無事でした。生かしていただいてありがとうございます」とつぶやいたそうです。生き残ったことを、ご先祖さまに感謝したというのです。それは、ご先祖さまを大切にしていれば、必ずご先祖さまが守ってくれるという確信があるからです。
 これこそ日本人です。わたしも、「いまのわたしたちがいられるのは、ご先祖さまのおかげ」と思える人間でいたいと思います。
 「自分のご先祖さまは、どう思っているか」という視点を持てば、きっとあなたの判断は独断にならないし、あなたの行動が傲慢(ごうまん)に映ることは少なくなると思います。
 そして、あなたは未来のご先祖さまです。「こんなことをすれば、子孫が困る」「子孫が恥ずかしくないような先祖になりたい」と思いながら生きれば、仕事も人生も好転することは言うまでもありません。

 何事もおかげさまでを口癖に
       生くる者をば先祖は守る  庸軒