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一条真也
「ハロウィンは死者の祭り」

 

 10月31日は「ハロウィン」だ。
 キリスト教における「万聖節」の前夜祭で、日本では「お盆」に近い。
 仮装した子どもたちが「お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ!」と言いながら、近所の家を訪問する。かぼちゃをくりぬき、中にろうそくを灯した「ジャック・オウ・ランタン」が有名である。
 戦後、日本人は多くの新しい年中行事を作ってきた、あるいは受け入れてきた。その代表的なものこそ、クリスマス、バレンタインデー、そしてハロウィンだろう。
 國學院大学副学長で宗教学者の石井研士氏によれば、クリスマスがごく普通に行われるようになったのは、昭和30年代以降という。バレンタインはもう少し遅く、40年代の終わりくらいからだそうだ。ハロウィンは20年ほど前は、今のような盛況ぶりは考えられなかった。ハロウィンほど一気に日本列島に浸透した海外イベントも珍しいと言える。
 その他にも、イースター、聖パトリックデー、サンクスギビングデー、ボスの日、セクレタリーの日、あるいはサン・ジョルディの日など、本来、日本の年中行事にはなかった記念日や年中行事が目立ってきた。
 年中行事のカタカナ化は、外来の行事の輸入にとどまらない。近年では「七夕」を「ラブ・スターズ・デー」や「サマー・バレンタイン」などと称して宣伝する店もある。
 カタカナ行事の"王様"であるクリスマスは、日本のお盆と同じく、死者をもてなす祭りである。クリスマス・イヴの晩餐とは、もともと死者に捧げられた食事であり、この食卓では招待客が死者で、子どもたちは天使の役目を果たしているのだ。
 天使たち自身も、じつは死者である。昔のヨーロッパのクリスマスでは、子どもたちが死者の代理人として大人の家庭を訪ね歩く習慣があった。この習慣が、アメリカのハロウィンに受け継がれたのである。
 というわけで、ハロウィンでは今は亡き人を思い出してほしい。