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一条真也
「島田裕巳氏との対談」

 

 宗教学者の島田裕巳氏と対談した。「葬儀」をテーマにした島田氏との共著の巻末企画である。これまで往復書簡の形で、何通か手紙のやりとりをしてから最後に対談したのだ。
 かつて、わたしは島田氏の『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)というベストセラーに対し、反論の書として『葬式は必要!』(双葉新書)を書いた。それから5年後、再び島田氏の著書『0葬』(集英社)に対抗して『永遠葬』(現代書林)を執筆した。
 島田氏は、葬式無用論の代表的論客として有名だが、わたしは葬式必要論者の代表のようにみられることが多い。そんな2人が共著を出すということに驚く人も多いようである。確かにわたしたちは、これまで因縁の関係のように言われてきた。
 しかし、意見が違うからといって、いがみ合う必要などまったくない。意見の違う相手を人間として尊重した上で、どうすれば現代の日本における「葬儀」をもっと良くできるかを考え、そのアップデートの方法について議論を深めることが大切だ。
 対談は東京・六本木ヒルズ49階の「アカデミーヒルズ」で行われた。島田氏とは意見の一致も多々あり、まことに有意義な時間を過ごすことができた。弁証法のごとく、「正」と「反」がぶつかって新たに「合」が生まれたような気がする。
 最近、原発や安保の問題にせよ、意見の違う者が対話しても、相手の話を聞かずに一方的に自説を押し付けるだけのケースが目立つ。ひどい場合は、相手に話をさせないように言論封殺するケースもある。そんな姿を子どもたちが見たら、どう思うだろうか。間違いなく、彼らの未来に悪影響しか与えないはずである。
 わたしたちは互いに相手の話を傾聴し、自分の考えもしっかりと述べ合った。当事者が言うのも何だが、理想的な議論が実現したように思う。
 なお、対談の詳しい内容については、10月刊行予定の『お葬式を問う』(島田裕巳・一条真也著、三五館)をぜひお読みいただきたい。