第140回
一条真也
『こども六法』山崎聡一郎著/伊藤ハムスター絵(弘文堂)
 現在、ベストセラーになっている本です。拙著『儀式論』の編集者である弘文堂の外山千尋さんが手掛けられた本で、献本して下さいました。伊藤ハムスター氏による、クスっと笑えるようなユーモラスな動物のイラストで法律をわかりやすく説明しています。
 著者は1993年、埼玉県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。修士(社会学)。教育研究者、写真家、俳優。現在は合同会社Art&Arts代表であり、慶應義塾大学SFC研究所所員。2013年からは「法教育といじめ問題解決」をテーマに研究活動と情報発信を行うほか、劇団四季「ノートルダムの鐘」に出演するなど、多彩な才能で活躍中です。
 本書は、刑法・刑事訴訟法・少年法・民法・民事訴訟法・日本国憲法・いじめ防止対策推進法の計7章から構成されており、「まえがき」で、著者はこのように述べています。
「あなたは法律にどんなイメージがあるでしょう。法律は、大人も子どもも、日本に暮らす人、日本に旅行でやってきている人も含めて、すべての人が守るべきルールです。でも、法律はわたしたちにきゅうくつな思いをさせるためのものではありません。むしろ、わたしたちの自由で安心な生活を守るためのものです。もし、人に暴力をふるったり、物を奪い取ったりしても、何もペナルティがなかったらどうでしょう? 急になぐられたり、お財布を盗まれたりしたときに、誰も助けてくれない国では、安心して生活できませんよね。そうです。法律は、みんなの安心で安全な生活を守るために決められたルールなのです」
 本書には、著者と編集者の「いじめをなくしたい!」という願いが込められています。本書の大ヒットによって、『週刊文春』の取材を受けた外山さんは、同誌の2019年10月24日号で、次のように語られています。
「身近にある問題を見て見ぬふりしている大人の、心の逃げ道を塞ぎたい気持ちもありました。いじめと全く無縁に育った人って、この国にはほとんどいないんですよね。児童虐待や、痴漢などの性犯罪もそう。はっきりと法で許されない行為だと知れば、そうしたものをただ黙って見過ごしてしまうことも、減ると思うんです」
 わたしの担当編集者でもある外山さんの、この言葉には感銘を受けました。本書はまずアイデアが秀逸であり、イラストも素晴らしい。もちろん、内容はわかりやすいです。もともと出版とは世の中のためになる営為だと思うのですが、まさにそんな本です。
 ぜひ、親子で本書をお読みください。