第6回
一条真也
「他人の誕生日を祝っていますか?」

 

 わたしは、「おめでとう」という言葉が大好きです。つまり、「お祝い」が大好きです。他人の慶事を祝うということは人間にとってもっとも大切なものだと思います。祝いの心とは、他人の「喜び」に共感することだからです。それは、他人の「苦しみ」に対して共感する「お見舞い」の対極に位置しながらも、他人の心に共感するという点では同じです。
 よく「他人の不幸は蜜の味」などと言われます。たしかに、そういった部分が人間の心に隠れていることは否定できません。でも、だからといって居直り、それを露骨に表現しはじめたら、人間終わりですし、社会も成立しなくなります。他人を祝う心とは、最高にポジティブな心の働きなのです。
 わたしたちは、人生で数多くの「お祝い」に出会います。三日祝い、お七夜、名づけ祝い、お宮参り、お食いぞめ、初誕生、初節句、七五三祝いなど、子どもの成長にあわせて、数多くのお祝いがあります。さらには成人式や長寿祝いもあるし、何と言っても結婚式がありますね。
 さて、老若男女を問わず、誰にでも毎年訪れる「お祝い」があります。そう、誕生日です。誕生日を祝うことは、「あなたが生まれてきたことは正しいですよ」と、その人の存在価値を全面的に肯定することに他なりません。
 わたしの会社では、全社員の誕生日を毎月お祝いしています。社長であるわたしが直筆のバースデーカードを書き、選んだプレゼントを添えて渡します。そして、職場のみんなが朝礼で「お誕生日、おめでとうございます!」の声をかけ、拍手をするのです。みなさんの喜んでくれる顔を見て、誕生日を祝うことこそ、人間関係の基本であるという確認を深めています。
 あなたは、家族や恋人はもちろん、周囲の人たちの誕生日を知っていますか。そして、「誕生日、おめでとう」の声をかけていますか。ぜひ、この心を通わせる素敵な魔法をお試しください。