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一条真也
「隣人祭り」のある街

「隣人祭り」というものをご存知だろうか。おそらく、名前ぐらいは聞いたことのある方が多いと思う。「隣人祭り」とは、一言で表すなら、地域の高齢者を中心とした食事会である。
 先月末、北九州市八幡西区にある高齢者複合施設「サンレーグランドホテル」で国内最大級の「隣人祭り」が開かれた。
 年1回の世界同時開催で、時差はあるにせよ、海外の諸都市でも同日に開催された。約200人が参加し、「隣に人が居る」という当たり前の幸せを世界中の人々と共有した。
「隣人祭り」は、今やヨーロッパを中心に世界30カ国以上、1千万人もの人々が参加するという。その発祥の地はフランスで、パリ17区の助役アタナーズ・ペリファン氏が提唱者だ。きっかけは、パリのアパートで一人暮らしの女性が孤独死し、1ヵ月後に発見されたことであった。ペリファン氏が駆け付けると、部屋には死後1ヵ月の臭気が満ち、老女の変わり果てた姿があった。同氏が同じ階に住む住民に話を聞くと、「一度も姿を見かけたことがなかった」と答えたという。
 大きなショックを受けたペリファン氏は、「もう少し住民の間に触れ合いがあれば、悲劇は起こらなかったのではないか」と考えた。そして、NPO活動を通じて1999年に「隣人祭り」を人々に呼び掛けた。
 最初の年は約1万人がフランス各地の「隣人祭り」に参加したが、2003年にはヨーロッパ全域、その後は世界中に広がり、08年には日本にも上陸した。そして同年10月、サンレーグランドホテルで九州初の「隣人祭り」が開催されたのである。
 ホテルの恒例行事であった「秋の観月会」とタイアップして行われたのだが、当時は孤独死が増え続けていた北九州市での「隣人祭り」開催とあって、マスコミの取材もたくさん受け、大きな話題となった。
 現在、わが社はNPO法人ハートウェル21と連動しながら、「隣人祭り」を中心とした隣人交流イベントのお手伝いを各地で行っている。今年も、750回以上の開催サポートを予定している。そして、その多くは北九州市での開催だ。
「隣人祭り」は、ご近所さんが集まってお茶や食事をする営みの総称であると、わたしは考えている。日本には「お花見」や「井戸端会議」など、昔からの隣人文化があった。そこには、お隣さんやご近所さんとほどよい距離で長くお付き合いする知恵があったのである。
 そんな昔ながらの知恵をいまの暮らしに合ったスタイルで見直そうというのが、わが社がサポートさせていただいている「隣人祭り」だ。ぜひ、みなさんも「隣人祭り」へ!