第2回
一条真也
「すべての人に笑顔を!」

 

 先日、タイに行ってきました。「世界最高のホテル」として名高いバンコクのオリエンタルホテルに宿泊しましたが、さすがにホスピタリティは最上級でした。人に会うとすぐ手を合わせて合掌するのは仏教国ならではですが、なによりもその笑顔が素晴らしい。旅の疲れや仕事上のストレスも一発で吹っ飛んでしまうような、まさに極上の笑顔です。
 私が経営する会社の経営理念のひとつに「スマイル・トゥー・マンカインド~すべての人に笑顔を」があります。当社はホテルや冠婚葬祭などのホスピタリティ・サービス業ですが、笑顔・挨拶・返事・お辞儀といったものを非常に大切にしています。中でも、笑顔が最重要だと私は思っています。
 マンカインドとは、すなわち人類のことであり、すべての人という意味です。すべての人は私たちのお客様になりえます。もちろんお客様のみならず、取引業者の方々もしかり。さらには社内の人たち、部下や後輩にも、ぜひ分け隔てなく笑顔で接してほしいと、社員には常々うったえかけています。
 かつてクレイジーキャッツの「日本全国ゴマスリ音頭」では、植木等が「手間もかからず元手もいらず」と歌っていました。笑顔もまた、手間もかからず、元手もいりません。ゴマスリなどしなくてよいから、そのかわりに笑顔を心がけて下さい。これほど安上がりで効果が高いサービス業のスキルは他に存在せず、最高のコスト・パフォーマンスです。
 笑顔こそは、国籍も民族も宗教も超えた、まさに世界共通語です。また性別や年齢や職業など、人間を区別したり差別したりするすべてのものを超越します。「すべての人に笑顔を」とは、「人間尊重」そのものなのです。
 介護においても笑顔が不可欠なことは言うまでもありません。そして大切なことがあります。介護を提供する人が笑顔を発するためには、その職場に笑顔が満ち溢れていなければならないということです。笑顔のない殺伐とした場所から、心からの笑顔は絶対に生まれないのです。逆に、ひとつの笑顔は次々に新たな笑顔を呼び込む。笑顔を発する人も、笑顔を受ける人も幸せになる。
 「笑う門には福来たる」とは、まさに真実ですね。