第1回
一条真也
「本を読んで心を太らせよう!」

 

 わたしは、本が好きで、とにかく毎日読んでいます。会社を経営しているので、もちろんビジネス書も読みますが、その他にも歴史や哲学や科学の本、それに小説など、とにかく何でも読みます。本好きが高じて、自分でも本を書きますし、最近は大学の客員教授として学生さんたちに読書指導も行っています。
 経営者としてのわたしは、『論語』やドラッカーの経営書などを繰り返し読み、その教えを活かしています。よく「読書が大事なことはわかっているけれど、忙しくて読むヒマがない」と言う人がいます。しかし、逆だと思います。本当は、「本を読まないから時間がない」のではないでしょうか。
 ビジネス書には、努力の末に成功した人の知識や経験やノウハウがたくさん書かれています。その人が何年も何十年もかけて体得した奥義を、わずか一冊の本を読むだけで得ることができるのです。人間は経験のみでは、一つの方法論を体得するのに数十年もかかります。でも、他人の経験を借りて、それを一日で可能にする読書ならば、最短の時間と最小の労力で成功にたどり着けるわけです。そのうえで自分なりの工夫を加えればよいのです。つまり読書とは、時間を短縮するタイム・ワープの方法に他なりません。
 プロイセンの鉄血宰相(さいしょう)ビスマルクに「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という有名な言葉があります。西欧の人々は主にローマ帝国の衰亡史などを参考に人間理解をしてきました。日本人は『十八史略』や『三国志』などの中国の歴史書によって人間研究をしてきました。歴史を知れば、「驕(おご)る平家は久しからず」の言葉のように、傲慢になることを防ぎ、非常識な行為や馬鹿な真似をすることもありません。つまり、知恵がつくのです。
 そして、読書の最大の目的とは、心をゆたかにすることにあります。これから毎月、心をゆたかにしてくれる素敵な本たちを紹介していきたいと思います。その中には、親子で楽しめる、童話や絵本などもたくさん入っています。
 よい本は心のごちそうです。体はスリムな方が健康によいですが、心には栄養をたっぷり与えましょう。これからはどんどん、本を読んで心を太らせてみませんか?