第2回
一条真也
『星の王子さま』サン=テグジュペリ著(岩波書店ほか)

 

 わたしは、今度、新しい本を出版しました。『世界をつくった八大聖人~人類の教師たちのメッセージ』(PHP新書)という本です。その本で、わたしは、ブッダ、孔子、老子、ソクラテス、モーセ、イエス、ムハンマド、聖徳太子といった偉大な聖人たちを「人類の教師たち」と名づけました。
 彼らの生涯や教えを紹介するとともに、八人の共通思想のようなものを示しました。その最大のものは「水を大切にすること」、次が「思いやりを大切にすること」でした。  「思いやり」というのは、他者に心をかけること、つまり、キリスト教の「愛」であり、仏教の「慈悲」であり、儒教の「仁」ですね。そして、「花には水を、妻には愛を」というコピーがありましたが、水と愛の本質は同じではないかと、わたしは書きました。
 そんな本を書き上げた後、ふと、サン=テグジュペリの『星の王子さま』が読みたくなりました。実に三十年ぶりに読み返しましたが、たいへん驚きました。なぜなら、「水は、心にもいいのかもしれないね...」という王子さまの言葉が、いきなり目に飛び込んできたからです。この本は、八人の人類の教師たちの教えを凝縮したような、ものすごい本だったのです。ふるえるぐらい、感動しました。
 「砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているからだ」という言葉も出てきます。心に「思いやり」という水に満ちた井戸のある人は美しいのです。
 『星の王子さま』は、日本人の多くは子ども向けの本だと思っていますが、本当は大人のためのメッセージ・ブックです。なんと、『聖書』や『資本論』に次いで人類に広く読まれた大ベストセラーでもあります。
 全体に流れるメインテーマは「本当に大切なものは目には見えない」です。わたしは、いま、これをサービス業に携わる者の心得として、いつも社員に話しています。自分たちの仕事は、「思いやり」「感謝」「感動」「癒し」といった目に見えない大切なものをお客様にお届けする最高に素敵な仕事なのだと心から思っています。