第10回
一条真也
『サンタクロースっているんでしょうか?』

 ニューヨーク・サン新聞「社説」中村妙子訳(偕成社)

 12月といえば、クリスマスですね。
 そして、クリスマスといえば、なんといっても主役はサンタクロース。そのモデルは、4世紀のトルコに実在していたニコラウスという聖人です。裕福だった彼は、子どもたちにプレゼントを贈る優しい老人だったとか。
 ある意味では、サンタクロースは世界最高の有名人といえるのではないでしょうか。地球上の多くの子どもたちがサンタさんからのプレゼントを心待ちにしています。
 ところで、みなさんは、お子さんやお孫さんから「サンタさんは、いるの?」と聞かれたことはありませんか?
 その答えは簡単。サンタクロースはたしかにいます!そのことを明らかにした本こそ、今回ご紹介する『サンタクロースっているんでしょうか?』です。タイトルは、バージニアという8歳の少女の問いです。この問いに、アメリカの新聞社が社説として真剣に答えました。100年以上前の実話です。
 「ニューヨーク・サン」紙の記者だった著者は、少女に対して「見たことがないということは、いないということではないのです」と、やさしく語りかけます。愛、思いやり、まごころ、信頼・・・この世には、目に見えなくても存在する大切なものがたくさんある。逆に本当に大切なものは目に見えないのだと記者は説きます。そして、サンタクロースとは、それらのシンボルだというのです。
 現代ほどサンタクロースの存在が求められる時代はありません。今度、お子さんやお孫さんから「サンタさんはいるの?」と聞かれたら、「もちろん、いるよ!」と答えてあげてくださいと、わたしは多くの方々に呼びかけています。
 なお、フランスの作家サン=テグジュぺリは『星の王子さま』という物語を書きました。この名作に一貫して流れているテーマは、「本当に大切なものは目に見えない」というものです。ニューヨークに住んでいたこともあるサン=テグジュぺリは、『サンタクロースっているんでしょうか』を読んでいたのではないでしょうか。わたしには、そう思えてなりません。