2013
07
株式会社サンレー

 代表取締役社長

  佐久間 庸和

「人間にとって必要なものとは?

 真のインフラ企業をめざそう!」

ピンチはチャンス!

 いま、冠婚葬祭互助会業界は危機的状況にあるという人がいます。たしかに大きな過渡期にあることは事実でしょう。でも、この危機を機会ととらえれば、わが業界はさらに飛躍できるものと信じます。
 先日、ヤマト運輸の都築幹彦元社長のお話を聴きました。伝説のカリスマ経営者・小倉昌男翁とともに宅急便という一大イノベーションを成功させた方ですが、「宅急便はどん底から生まれた」と言われていました。
 わたしは、それを聞いて、出光佐三翁のことを連想しました。佐三翁は、出光興産の本店のある門司の対岸にある下関では石油を売れないことから、関門海峡で船の上で石油を売ることを思いつき、「海賊とよばれた男」となりました。その後、出光興産は東アジア全域に進出し、「世界の出光」へと飛躍したのです。
 ヤマト運輸や出光興産から学べることは、「ピンチはチャンス!」ということです。

インフラとは何か

 わが業界も、このたびの一連の出来事を陽にとらえ、"禍転じて福と為す"の発想で行きたいものです。本心を言えば、わたしは、冠婚葬祭互助会は日本人にとって必要な存在と思っています。
 一般に、社会にとって必要不可欠の存在をインフラといいます。インフラとは、「インフラストラクチャー(infrastructure)」の略です。
 国民福祉の向上と国民経済の発展に必要な公共施設とされます。具体的には、学校、病院、道路、港湾、工業用地、公営住宅、橋梁、鉄道路線、バス路線、上水道、下水道、電気、ガス、電話などを指し、社会的経済基盤と社会的生産基盤とを形成するものの総称が「インフラ」と呼ばれています。
 しかし、わたしは電気やガスや電話などは「あれば便利だけれど、なくても人間は生きていける」ものだと思っています。ましてや、インターネットなどなくても、生存上は何の不都合もありません。「便利」と「必要」は明らかに違いますね。
 人間が生存する上で本当に必要なものは、「ライフライン(Life Line)」とも呼ばれます。これには日常生活を支えるインフラといった意味があります。東日本大震災以降、よく耳にするようになった用語ですね。

衣食住の視点から

 人間にとって、本当に必要なものとは何か。「衣食住」という言葉がありますが、これなど古今東西の人間にとって必要なものを集約していると思います。
 最近、『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか』(ダイヤモンド社)という本を読みました。著者は、コンサルタントの山口揚平氏ですが、非常に考えさせられる内容でした。同書には「衣食住」を「生活インフラ」としてとらえる考え方が示されていました。山口氏は、衣食住といった生活インフラについては、今後、巨大企業が一気にそのニーズを満たすようになると予測します。
 そして、ユニクロがすでに「衣のインフラ」となり国民服となっているという事実を指摘します。また、「セブンプレミアム」というオリジナル食品群を提供するセブン&アイ・ホールディングスは「食のインフラ」をめざしていると紹介します。

住のインフラ企業をめざす

 そして、「衣」と「食」に続いて「住」においても山口氏は次のように述べます。
「住についても、身寄りのない高齢者がますます増える一方、空き住居も多いことから、従来の老人ホームや介護施設とは一線を画した新しい集合住宅の仕組みが出てくるだろう。コンビ二のバラエティに富んだ食品群、ユニクロの安価で丈夫な衣服、住居の空室率が25%という現実。これら衣食住の〝インフラ企業〟は、今では東京電力を超える公共性・一般性を有している」
 わたしは、二つの「住のインフラ」があると思います。一つは、「老人漂流社会」として問題になっている高齢者の「終(つい)の棲家(すみか)」。そしてもう一つは、亡くなった後の「死後の棲家」です。こちらは、「無縁社会」として問題になっているように、亡くなってもお墓に入れない人が多くなっていることからも、その必要性がわかります。
 わが社が推進している「隣人館」、そして「鎮魂の森」、この二つのプロジェクトこそは両面的に「住のインフラ」を整備することにほかなりません。

「人間インフラ」から「生活インフラ」へ

  「衣のインフラ企業」をめざすユニクロ、「食のインフラ企業」をめざすセブン、そしてわが社は「住のインフラ企業」をめざす。 さらに、「衣食」とくれば、思い浮かぶ言葉があります。そう、「衣食足りて礼節を知る」ですね。「礼」もインフラになりうる。
  「礼」はもともと「葬礼」から生まれました。そして、ヒトは埋葬をすることによって人間になりました。つまり、葬送儀礼こそは人間の存在基盤なのです。「衣食住」が生活インフラならば、「礼」は人間インフラと言えるでしょう。
 そのことを強く教えてくれたのが、あの東日本大震災でした。3・11によって、日本は「無縁社会」などと言っている場合ではなくなりました。また、「葬式は、要らない」という妄言は消え去ってしまいました。 わたしは、人が亡くなったとき、確実に葬儀が行える冠婚葬祭互助会というビジネスモデルこそ「礼」という「人間インフラ」を支えていることに気づきました。
 人間インフラ企業であるサンレーは、今後さらに生活インフラ企業もめざします。これからが楽しみです!

 人として 老い病み死ぬる者として
    なくてはならぬものを売りたし  庸軒