第80回
一条真也
『生涯現役の知的生活術』渡部昇一ほか著(育鵬社)

 

 このたび、大ロングセラー『知的生活の方法』(講談社現代新書)の著者である上智大学名誉教授の渡部昇一氏と対談する機会に恵まれました。

 その内容は新刊の『永遠の知的生活』(実業之日本社)に収められています。
 渡部氏との対談に際して、氏に関連する資料を多く読んだのですが、その流れの中で本書を知りました。
 各界で名を成した方々の知的生活の方法が余すところなく開示されています。
 育鵬社の編集部による「はじめに」の冒頭には、13人の著者が以下のように年齢順に列記されています。
小野田寛郎(90歳)、千玄室(89歳)、東城百合子(86歳)、三浦朱門(86歳)、岡崎久彦(82歳)、渡部昇一(81歳)、曽野綾子(80歳)、屋山太郎(80歳)、伊藤隆(79歳)、小川義男(79歳)、村上和雄(76歳)、渡辺利夫(73歳)、江口克彦(72歳)
 この13人の年齢を合計すると、映画『スター・ウォーズ』シリーズに出てくるヨーダ(約9世紀にわたる生涯)を超え、1053歳になるといいます。

 なんだか凄すぎて笑ってしまいますが、ちなみに13人の平均年齢は81歳だとか。ちょうど、本書が刊行された2012年当時の渡部昇一先生が81歳でした。
この13人の著者に共通していることは、以下の3点です。
①ライフワークを持っており、まったく呆けていない
②これまでの人生において、それぞれの分野で金字塔を打ち立てており、人を妬むことがない。
③そのため伸びやかに生きており、健康も害さず元気に生涯現役の人生を送っている。
 さらに、人生を80年とした時、60歳から65歳で定年を迎えると、20年から15年の歳月があります。この時間をもて余して無為に過ごしてしまうのか、それとも人生の総仕上げともいえるこの黄金時間を充実させるかは、大きな分かれ目となるわけです。
 本書には、一組だけ夫婦が登場しています。日本藝術院院長の三浦朱門氏と作家の曽野綾子氏です。三浦氏は「夫婦互いに、生きたいように生きる」と述べ、曽野氏は「自立の気構えがすべての基本」と述べています。本書を夫婦で読んでみるのも、面白いかもしれませんね。
 戦前、戦後、そして平成の時代を生き抜き、「一身にして三生」ともいえる貴重な人生経験を有する13人の方々の知恵の数々は大変勉強になりました。
 高齢者とはまさに人生の達人です。わたしは、早く老人になりたいです!