18
一条真也
「バレンタインデーに想うこと」

 

 2月14日は、バレンタインデーである。世界各地で男女が愛を誓い合う日とされるが、もともとは西方教会に伝わる聖ウァレンティヌスの記念日だ。彼は、3世紀後半にローマ皇帝の迫害によって殉教した。
 日本では、女性が男性に愛の告白として、チョコを贈る習慣がある。その最初の仕掛け人としては、モロゾフ、メリーチョコレートカムパニー、森永製菓、伊勢丹、ソニープラザなど諸説あるようだ。
 映画「ショコラ」や「チャーリーとチョコレート工場」などでも描かれたように、チョコレートは人の心を結びつける素敵なお菓子だ。しかし、わたしたちの手元に届くまでには深刻な事情がある。
 キャロル・オフの『チョコレートの真実』(北村陽子訳・英治出版)によれば、原料となるカカオを栽培するアフリカの農園で働く子どもたちは、自分たちの過酷な労働の結果、夢のように甘くて美味しいお菓子が生まれることを知らないという。
 わたしはカカオ農園で働く子どもたちにチョコレートを味あわせ、「自分たちは人を幸せな気分にする素晴らしいものを作っている」ことに気付かせてあげたい。そして、彼らの将来が、少しでも望ましい方向へ向かうことを願わずにはいられない。
 ところで、わたしは、マザー・テレサをリスペクトしている。彼女の偉大な活動のひとつに「死を待つ人の家」を中心とした看取りの活動がある。ここで死にゆく人々は、栄養失調から苦悶の表情を浮かべて死ぬ人も多いそうだが、いまわの際に氷砂糖やチョコレートなどを口に含ませると微笑んで旅立ってゆくという。
 ちょうど2月14日、わたしはインドに滞在している。スケジュール次第では「死を待つ人の家」を訪れる可能性も高い。ぜひ、日本製のチョコレートを持参したいと思う。
 アフリカの子どもたちや、インドの老人たちも含めて、あらゆる人々にチョコレートが行き渡り、みんなが幸せな気分になれますように!