2016
06
株式会社サンレー

 代表取締役社長

  佐久間庸和

「茶道は究極のおもてなし

 『こころ』を『かたち』にするプロになろう!」

●小笠原家茶道古流

 今年から、松柏園ホテルで小笠原家茶道古流の「立居振舞い・茶道教室」が始まりました。古流とは豊前小倉藩に伝わる茶道の流派です。後に侘び茶を完成させた千利休よりも古い起源という意味で、後世になって「古流」と名付けられました。
 流祖の古市胤栄(いんえい)と古市澄胤(すみだね)の兄弟は大和国の人で、村田珠光(じゅこう)の高弟です。珠光といえば、千利休の師と言われる武野紹鴎(じょうおう)より古い室町時代中期の茶人で「侘び茶」の創始者と目されている人物です。利休は、「術は紹鴎、道は珠光より」とも説いており、侘び茶を完成させた利休にとっても珠光は心の師でした。
 江戸時代初期、豊前小倉藩初代藩主である小笠原忠真(ただざね)が古市澄胤の後裔である古市了和を茶堂として召し抱え、小笠原家古流と称するようになりました。

●小笠原流の歴史

 小笠原家といえば、礼法の家元として有名です。小笠原流礼法の歴史は鎌倉時代にまでさかのぼり、武家作法として始まり、発展していきました。
 小笠原家では、弓馬の法を代々嫡子に伝えましたが、室町時代の7代目貞宗のときになって、礼法が加えられ、弓・馬・礼の三法をもって小笠原の現代へとつながる伝統の基盤ができあがったのです。貞宗は南北朝時代に後醍醐天皇に仕え、「小笠原は日本武士の定式たるべし」という御手判を賜り、合わせて家紋として「王」の字の紋を賜りましたが、これが小笠原家の三階菱です。また、18代の貞慶は、「三議一統」後に加えられた記述をし、武家礼法を「小笠原礼書七冊」としてまとめました。

●小倉と小笠原流

 貞慶の子である秀政は、大阪夏の陣にて長男と共に戦死しますが、次男の忠真が、その功により、松本から播州明石11万石を経て、豊前小倉15万石の領主となりました。
 ここから、小倉の地と小笠原家との深い縁が始まります。小笠原流礼法は1日にして成ったものではありません。連綿とした歴史の流れの中で形づくられて、今日まで伝えられてきたものです。それは、多くの人々がその合理性を認めていたからでしょう。
 そして、今年の4月3日、小笠原家古流の全国組織である「未得会」の会長に、サンレーグループの佐久間進会長が就任しました。松柏園ホテルで開催された総会で、佐久間会長は、「最近、世界中から日本のきめ細かなおもてなしが注目を集めています。このようなおもてなしの文化は、茶道をはじめとした日本古来の芸道に培われた和の精神から生まれたものであり、助け合い・支え合い・譲り合うことが根幹にあります」と述べました。

●小倉城で大茶会を!

 また、佐久間会長は「この和の精神を、日本に観光に来られる外国の方々にも広く知らしめていきたい。2020年には東京でオリンピックが開催されることが決定していますので、海外からの観光客も年々増加していくことが見込まれます。2020年にはこの小倉でも、小倉城を舞台に海外観光客を集めての大茶会を開催したいと考えています。ぜひ、皆様のお力添えをいただき、古流の発展のためともにがんばって参りましょう」と訴えました。
 もともと佐久間会長は、小笠原流礼法第32代宗家の小笠原忠統(ただむね)先生より礼法を学び、「佐久間禮宗」の名で「実践礼道小笠原流」を主宰してきました。
 日本における礼儀作法は、武家礼法であった小笠原流礼法がルーツとなっています。わたしも学生時代より礼法を学び、26歳のときに、小笠原忠統先生から免許皆伝を許されました。

●ジャパニーズ・ホスピタリティ

 小笠原流礼法などというと、なんだか堅苦しいイメージがありますが、じつは人間関係を良くする技術の体系にほかなりません。小笠原流礼法は、何よりも「思いやりの心」「うやまいの心」「つつしみの心」という3つの心を大切にしています。これらは、そのまま人間尊重の精神であり、人間関係を良くする精神なのです。
 そして、茶道の精神は「おもてなしの心」そのものです。21世紀におけるハートフル・ソサエティの到来には、日本の茶の文化が深く関わっています。
 サービス業界を中心に「ホスピタリティ」の重要性がいたるところで叫ばれていますが、もともと茶道の世界はジャパニーズ・ホスピタリティとでも呼ぶべき密度の濃い「もてなし」の文化でした。東京オリンピックを迎える今こそ、ジャパニーズ・ホスピタリティを示すときです。

●「こころ」を「かたち」にするプロになろう!

 茶は単なる飲料ではありません。そこには「もてなし」の心が欠かせないのです。
 茶で「もてなす」とは、最高のおいしいお茶を提供し、最高の礼儀をつくして相手を尊重し、心から最高の敬意を表することに尽きます。そして、そこに「一期一会」という究極の人間関係が浮かび上がってきます。わが社のミッションは「冠婚葬祭を通じて、良い人間関係づくりのお手伝いをする」ですが、茶はまさに冠婚葬祭に代表されるヒューマン・コミュニケーションのシンボルなのです。「こころ」を「かたち」に表した茶道や礼法は、わたしたち日本人の大切な文化のひとつです。この素晴らしい文化を後世に伝えていくため、わたしたちは「もてなし」の心で仕事に取り組みましょう。
 そして、「こころ」を「かたち」にするプロ集団になろうではありませんか!

 客人(まろうど)をあつくもてなす茶の心
         形にするは我らの仕事  庸軒