第112回
一条真也
『日本人は死んだらどこへ行くのか』

 鎌田東二著(PHP新書)

 お盆が近いですが、日本人にとっての8月は死者を思い出す季節です。そして、あの世について想いを馳せる季節ですね。
 本書は、日頃から親しくさせていただいている宗教哲学者の新刊です。日本人の死生観の本質を見事に解明しています。
 最澄、本居宣長、平田篤胤、柳田國男、折口信夫、南方熊楠、宮沢賢治、遠藤周作といった日本思想史のキーパーソンの死生観を追い、日本人の魂の原郷を求めています。本書を読めば、「なぜ、日本人の葬儀は簡略化していくのか」「なぜ、日本人の墓は荒れていくのか」「無縁社会の行方は?」といった問いの答えも得られます。1人でも多くの日本人に読んでほしい本です。
 第五章「星になる、風になる――『草木国土悉皆成仏』の思想」の「求められる広範なパワースポット」では、わたしの名前が登場します。日本人の死生観の歴史上の重要な出来事について述べます。
 「2010年にNHKスペシャルで無縁社会に対する警鐘がなされ、以後、無縁社会を扱った本が何冊か話題になり、同じ年に島田裕巳さんが、『葬式は、要らない』を出版。それに対する反論として、一条真也さんが『葬式は必要!――最期の儀式に迷う日本人のために』(双葉新書、2010年)を出します。すでにあったパワースポットブームも含め、これらが3つ巴となって2010年に浮上してきました。浮上してきたそのような課題を串刺しするようにして、翌年、東日本大震災が起こりました。無縁社会に向かっていく方向性は、いまも潜在的に続いています。限界集落問題をはじめ、無縁社会化は着々と進行しています」
 続けて、著者は 「ただし、中世がそうであったように、無縁社会は新しい結縁社会をつくる1つの転換点になります」とした上で、以下のように述べます。
 「多様な死の形の1つとして、『葬式も墓も要らない』という思想もありえます。しかし、だからといって完全になくしてしまうことは、絶対にできません。多くの人は、何らかの形で葬儀もお墓も必要と思っています。それぞれの死生観を納得させる、葬儀やお墓のあり方をいろいろ考えていくことが重要です」
 わたしは、日本人が無縁社会を乗り越え、有縁社会を再生する可能性を持った存在として、「冠婚葬祭互助会」を挙げたいと思います。「万人は1人のために、1人は万人のために」という相互扶助の精神で、葬儀などの儀式サービスを提供する組織です。
 冠婚葬祭は目に見えない「縁」や「絆」を可視化します。そして、互助会は日本人の死後に対する安心を与えるでしょう。