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一条真也
「『こころの世界遺産』を読もう!」

 

 前回、ご紹介した『慈経 自由訳』(三五館)の帯には、「親から子へ、そして孫へと伝えたい『こころの世界遺産』」と書かれている。
  「こころの世界遺産」という言葉はわが造語で、新聞のコラムやブログなどでも再三言及してきた。
 今年の7月9日、福岡県宗像市の沖ノ島が「神宿る島、宗像・沖ノ島と関連遺産群」の構成資産の1つとして、ユネスコにより世界遺産に登録された。地元ではかなり盛り上がっている。地元といえば、わたしは、北九州市の門司港にある日本唯一のミャンマー式寺院「世界平和パゴダ」が世界遺産になることを願っている。
 世界遺産には、遺跡や聖地などの「場所」、寺院や神殿などの「建物」のイメージが強いが、わたしは「こころの世界遺産」というものがあってもいいのではないかと思っている。
 というのも、人類の歴史において、多くの人々の「こころ」に対して大きな影響を与え、現在も続けている人物や書物に深い関心があるのだ。
 以前、『世界をつくった八大聖人』(PHP新書)という本を書いた。同書ではブッダ、孔子、老子、ソクラテス、モーセ、イエス、ムハンマド、聖徳太子の8人を取り上げ、その生き様、考え方、そして共通点などについて詳しく述べた。
 人類に影響を与えた人物には、8人の聖人以外にも、古今東西の英雄がいる。しかし、彼らの築いた帝国や王国や王朝や幕府は今では存在しない。彼ら英雄の影響力は現在進行形ではないのである。
 聖人たちの教えは、仏典、『旧約聖書』『新約聖書』『コーラン』『論語』『老子』などに残されている。また、『ギリシャ神話』や『古事記』、『イソップ寓話』や『アラビアン・ナイト』、さらには、アンデルセンなどの童話作家たちの作品も、世界中の人々の「こころ」に良き影響を与え続ける。
 これらの書物は「こころの世界遺産」と呼べる人類の宝であり、世界平和に通じる「教養」を育む。
 「こころの世界遺産」を読もう!