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一条真也
「老いてこそ文化に親しむ」

 

 11月3日は「文化の日」である。
 「文化」といえば、わたしは常々、「老い」とセットで考えている。 「敬老の日」に合わせて総務省が発表したデータでは、全国で90歳以上が初めて200万人を超え、人口の約60人に1人が90歳以上となった。
 人は老いるほど豊かになるというのが、わたしの持論である。一般に、高齢者には豊かな時間がある。時間にはいろいろな使い方があるが、「楽しみ」の量と質において、文化に勝るものはない。さまざまな文化にふれ、創作したり感動したりすれば、老後としての「グランドライフ」が輝いてくるはずだ。
 文化には訓練だけでなく、人生経験が必要とされる。また、文化には高齢者にふさわしい文化というものがあるように思う。
 長年の経験を積んでものごとに熟達していることを「老熟」といい、経験を積んで大成することを「老成」という。「老」には深い意味があるのだ。
 わたしは「大いなる老いの」という意味で「グランド」と名づけている。これは、グランドファーザーやグランドマザーの「グランド」でもある。
 この「老熟」や「老成」が何よりも物を言う文化が「グランドカルチャー」だ。グランドカルチャーは、将棋よりも囲碁、生花よりも盆栽、短歌よりも俳句、歌舞伎よりも能とあげていけば、そのニュアンスが伝わるのではないだろうか。
 もちろん、どんな文化でも老若男女が楽しめる包容力をもっているが、特に高齢者と相性のよい文化、すなわちグランドカルチャーというものがある。
 わが社では高齢者向けの文化教室「グランドカルチャーセンター」を運営している。 グランドカルチャーは高齢者の心を豊かにし、潤いを与えてくれる。それは老いを得ていくこと、つまり「得る老い」を「潤い」とする。超高齢社会を迎えた今こそ、高齢者は文化に親しもうではないか。
 その生き方が、「後期高齢」を「光輝好齢」に変えてくれるはずだ。