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一条真也
新入社員へ
 新型コロナウイルスの感染拡大により、わが業界も大変混乱している。そんな中、4月1日を迎え、例年のグループ合同入社式の規模を縮小して辞令交付式を行った。不安そうな新入社員を前に、わたしはマスクを外して語った。
 冠婚葬祭の会社に入った新入社員のみなさんに一番伝えたいことは儀式の大切さです。
 結婚式や葬儀、七五三や成人式などは不安定な「こころ」を安定させる「かたち」です。
 人間の「こころ」が不安に揺れ動く時とはいつかを考えてみると、子供が生まれたとき、子どもが成長するとき、子どもが大人になるとき、結婚するとき、老いてゆくとき、そして死ぬとき、愛する人を亡くすときなどがあります。
 その不安を安定させるために、初宮祝、七五三、成人式、長寿祝い、葬儀といった一連の人生儀礼があるのです。そう、「かたち」があるから、そこに「こころ」が収まるのです。
 ですから、感染拡大の不安の中で、あえて今日の辞令交付式を行いました。儀式とは、人間を幸せにする文化です。
 大古から、人類は葬儀と結婚式を世界各地で行ってきました。それによって、自死の連鎖を防ぎ、家族の形態を維持し、社会を発展させてきました。人類が冠婚葬祭を発明しなかったら、とうの昔に滅亡していたと言えます。
 また、お互いに助け合う「相互扶助」の精神がなくても、人類は確実に滅亡しました。
 すなわち、冠婚葬祭および相互扶助は人類の本能ともいえるものであり、その二大本能に基づく冠婚葬祭互助会は不滅の産業なのです。
 冠婚葬祭ほど、みなさんが人生を賭けるに値する素晴らしい仕事はありません。ぜひ、みなさんが生きる未来を、みなさん自身が創造して下さい。
 この日は、以上のような話をした。何事も陽にとらえて前向きに進もう。