第1回
佐久間 庸和
「先祖を大切にする沖縄」

 

 早いもので、沖縄で冠婚葬祭の会社をスタートしてから、36年が経過しました。わが社は北九州市を本拠地に全国展開してきましたが、特に沖縄の地に縁を得たことは非常に深い意味があると思っています。というのは、サンレーの社名には三つの意味がありますが、そのどれもが沖縄と密接にかかわっているからです。
 まずサンレーとはSUN-RAY(太陽の光)です。沖縄にはきわめてユニークな太陽洞窟信仰というものがあります。首里から見て東の方角にあるため久高島が太陽の生まれる島、つまり神の島とされたようです。久高島から昇った太陽は海のかなたにある死後の理想郷ニライカナイに沈むといいます。私は葬祭会館とは魂の港としてのソウル・ポートであり、ここから故人の魂はニライカナイへ旅立っていくと思っています。
 次に、サンレーとは産霊(むすび)です。「生命をよみがえらせる」という意味です。産霊の最大の舞台といえば、祭りです。沖縄は「祭りの島」と呼ばれるほど、祭礼が多いですね。産霊は「生命そのものの誕生」も意味します。沖縄は出生率が日本一です。15歳以下の年少人口率も日本一で、まともな人口構造は日本で沖縄だけなのです。沖縄の結婚式を見ると、花嫁さんのおなかが大きな結婚式が多い印象です。つまり「できちゃった結婚」がとても多いわけですが、これは素晴らしいことだと私は思います。
 そしてサンレーとは讃礼(礼の心を讃える)です。言うまでもなく、沖縄は守礼之邦。礼においても最も大事なことは親の葬儀であり、先祖供養です。沖縄人ほど、先祖を大切にする人はいません。沖縄の人は先祖の墓の前で会食します。先祖と一緒にご飯を食べ、そこは先祖と子孫が交流する空間となるわけです。子どものころから墓で遊ぶことは、家族意識や共同体意識を育ててくれます。これは今の日本人に最も欠けているものであり、ぜひ本土でもやるべきだと確信します。
 私は沖縄が大好きです。沖縄の地で36年間、冠婚葬祭業を続けてこられたことを心の底から誇りに思います。そして、沖縄には本土の人間が忘れた「人の道」があり、それこそ日本人の原点であると思います。今こそ本土は「沖縄復帰」すべきではないでしょうか。