第4回
佐久間 庸和
「無縁社会と沖縄」

 

 先日放映のNHKスペシャル「無縁社会〜無縁死3万2千人の衝撃」の反響がすさまじいようです。日本の自殺率は先進国中でワースト2位ですが、ここ最近、身元不明の自殺とみられる死者や行き倒れ死などが急増しているそうです。引き取り手のない遺体が増えていく背景には、日本社会があらゆる絆を失っていき、無縁社会と化したことに大きな原因があるようです。

 かつて日本社会には「血縁」という家族や親族との絆があり、「地縁」という地域との絆がありました。日本人は、それらを急速に失っています。では、わたしたちが幸せに生きるためには、どうすべきか。何よりも、先祖と隣人を大切にすることが求められると思います。

 まず死者を忘れないということが大切です。わたしたちは死者とともに生きているのであり、死者を忘れて生者の幸福など絶対にありえません。最も身近な死者とは多くの人にとって先祖でしよう。先祖をいつも意識して暮らすということが必要です。もちろん、わたしたちは生きているわけですから、死者だけと暮らすわけにはいきません。ならば、誰とともに暮らすのか。まずは、家族であり、それから隣人ですね。考えてみれば、祖父母や両親とは生ける「先祖」であり、配偶者や子どもは最大の「隣人」です。

 現代人はさまざまなストレスで不安な心を抱えて生きています。ちょうど、空中に漂う凧のようなものです。そして、凧が安定して空に浮かぶためには縦糸と横糸の両方が必要ではないでしょうか。縦糸とは時間軸で自分を支えてくれるもの、すなわち「先祖」です。横糸とは空間軸から支えてくれる「隣人」です。この二つの糸があれば、安定して宙に漂っていられる、すなわち心安らかに生きていられる。これこそ、「幸福」の正体ではないかと思います。

 沖縄の人々は日本中のどこよりも先祖と隣人を大切にします。それだけではない。「いちゃりばちょーでい」という言葉は「一度会ったら兄弟」という意味です。沖縄では、あらゆる縁が生かされるのですね。まさに「袖すり合うも多生の縁」は沖縄にあり!

 「守礼之邦」は大いなる「有縁社会」でもあるのです。

 すべての日本人が幸せに暮らすためのヒントが沖縄にはたくさんあります。沖縄には「無縁社会」は無縁であると信じています。