第2回
佐久間 庸和
「祝宴には踊りと酒を」

 

 最近、モロッコに行ってきました。カサブランカをはじめ、フェス、メクネス、ラバトといった諸都市を巡りました。映画史を飾る名作「モロッコ」や「カサブランカ」の世界がよみがえり、気分はゲイリー・クーパーやハンフリー・ボガートでしたが、最大の訪問目的は結婚式の視察でした。実は、モロッコの伝統的結婚式は世界で一番豪華で派手とされているのです。
 アフリカ大陸の北端にあるモロッコ王国はイスラム教の国です。他のイスラム諸国と同じく、男性中心で世の中が動いており、女性の姿を見かけることの少ない社会です。ただし、例外として結婚式では完全に主役となり、美しい民族衣装を着飾った女性たちが会場を占拠し、踊りまくり、歌いまくります。
 特筆すべき点としては、「ミーダー」と呼ばれる儀式があります。なんと大きな桶に乗せられた花嫁が会場を練り歩き、結婚式に参列している人々は花嫁に向かって祝福の言葉を投げかけるのです。
 イスラム社会の女性は顔をベールで隠す人も多い中で、結婚式の日だけは花嫁が公衆の面前に堂々と素顔をさらけ出すことのできる唯一の日です。花嫁以外の女性たちも同じく、この日ばかりは堂々と素顔をさらけ出しています。会場中央に設けられたステージには、多くの新婦側の友人たちが集まって踊ります。結婚式は夜を通して行われますが、その後、未婚の男性たちは女性たちに声をかけ、そこから恋が生まれることも。
 エネルギッシュに踊りまくるモロッコの結婚式から、わたしは沖縄のカチャーシーを連想しました。結婚披露宴や生年祝など、沖縄の祝宴にはカチャーシーがつきものです。老若男女がみんな踊るさまは、本当にほほ笑ましいものです。
 しかも、おそらく過去の祖先たちも姿は見えないけれどそこにいて、一緒になって踊っているという気配がします。カチャーシーのリズムに身をまかせていると、「生命は永遠である」という不思議な実感がわいてきます。
 そして、そこにはやはりアルコールの心地よい酔いが欠かせません。宗教上の理由からモロッコの結婚式ではお酒が出ませんでしたが、やはり祝宴には音楽とともにお酒があったほうが楽しい。  遠い異国の地の結婚式に参列しながら、踊りに疲れたわたしは「ああ、泡盛の水割りが飲みたいなあ!」と考えていました。