2012
11
株式会社サンレー

代表取締役社長

佐久間 庸和

「神道は日本人の心の柱

 グリーフケアこそ産霊である!」

久しぶりの伊勢神宮参拝

 10月の終わり、北陸本部の社員旅行に合流して、伊勢神宮を訪れました。外宮と内宮をみんなで参拝し、会社の繁栄を祈念しました。
 伊勢神宮といえば日本を代表する神社ですが、来年は20年に一度の式年遷宮が行われるということで大きな注目を浴びています。
 式年遷宮に際して、建て替えられる社殿は、じつに65棟。装束や神宝類もすべて一新されるため、その費用は前回(1993年)で約327億円にものぼりました。今回は、なんと約550億円かかるとされています。さすがは日本最大の神社だけあって、スケールが大きいですね。
 それにしても、ずいぶん久方ぶりの参拝でした。最初に伊勢神宮を訪れたのは、1990年の12月でした。わたしは伊勢市で講演をしたのですが、市長や市議会議長のはからいで普通は絶対に入れない最奥部まで入れていただき公式参拝させていただきました。

宗教を超越した聖地

 かつて神宮に参拝したイギリスの歴史家アーノルド・トインビーは、「この聖地において、わたくしは、すべての宗教の根底に潜む統一性を見出す」と述べましたが、わたしもトインビーと同じ感動を味わいました。
 やはり伊勢神宮を参拝して感動した有名なイギリス人がいます。ジョン・レノンです。
 彼の名曲「イマジン」がイギリスの葬式での使用を禁止されているとのニュースが最近流れました。冒頭の「天国なんてありゃしないと、想像してごらん」という歌詞が、葬式には不適切だと判断されたというのです。欧米のキリスト教保守派層から、神を否定して、冒涜する歌として強く反撥されているとか。
 わたしは、おそらくジョン・レノンは神道的な感性を持っていたのではないかと思います。天国とは雲の上の場所などではなく、山や、森や、川や、海という現世のすべてこそが天国であるという神道的メッセージを彼の歌詞から感じてしまうのです。

神道は日本人の心の柱

 いま、神社が見直されていますね。とくに若い人たちの間で、「パワースポット」として熱い注目を浴びています。いわゆる生命エネルギーを与えてくれる「聖地」とされる場所ですね。そして、伊勢神宮こそは日本最大のパワースポットとされています。
 伊勢神宮や出雲大社には心御柱がありますが、日本人の心の柱は神道に他なりません。なんといっても日本人のアイデンティティの根拠は、神話と歴史がつながっていることです。神話により日本人は、現在の天皇家の祖先が天を支配する天照大神につながることを知っています。
 天照大神はいまも伊勢神宮に祀られており、その子孫が皇室です。このように神話時代が現在まで続いているのは日本だけであり、そこに日本文化の最大の特色があります。

『古事記』はグリーフケアの書

 その日本神話は『古事記』として集成されました。和銅5年(712年)に太安万侶を撰録者として成立したとされます。ということは、今年は、『古事記』1300年の記念すべき年ということになりますね。
 『古事記』についてのさまざまなイベントが開催され、また関連書籍も多く出版されています。その中の一冊である『古事記ワンダーランド』(角川選書)の中で著者の鎌田東二氏は、なんと『古事記』はグリーフケアの書であると述べています。
 『古事記』は、物語ることによって、これらの女神たちの痛みと悲しみを癒す「鎮魂譜」や「グリーフケア」となっているというのです。最もグリーフケアの力を発揮するものこそ、歌です。歌は、自分の心を浄化し、鎮めるばかりでなく、相手の心をも揺り動かします。歌によって心が開き、身体も開き、そして「むすび」が訪れます。

「むすび」の力とは何か

 『古事記』には、あまりにも有名な「むすび」の場面があります。天の岩屋戸に隠れていた天照大神が岩屋戸を開く場面です。
 アメノウズメのストリップ・ダンスによって、神々の大きな笑いが起こり、洞窟の中に閉じ籠っていた天照大神は「わたしがいないのに、どうしてみんなはこんなに楽しそうに笑っているのか?」と疑問に思い、ついに岩屋戸を開いてしまうのです。
 『古事記』は、その神々の「笑い」を「咲ひ」と表記しています。この点に注目する鎌田氏は、次のように述べます。
 「神々の『笑い』とは、花が咲くような『咲ひ』であったのだ。それこそが〈生命の春=張る=膨る〉をもたらすムスビの力そのものである。この祭りを『むすび』の力の発現・発動と言わずして、何と言おうか」

すべては「むすび」のために

 わが社の社名「サンレー」には、「SUN-RAY(太陽の光)」そして「産霊(むすび)」の意味がともにあります。
 最近、わが社は葬儀後の遺族の方々の悲しみを軽くするグリーフケアのサポートに力を注いでいるのですが、『古事記ワンダーランド』を読んで、それが必然であることに気づきました。
 なぜなら、グリーフケアとは、闇に光を射すことです。洞窟に閉じ籠っている人を明るい世界へ戻すことです。そして、それが「むすび」につながるのです。
 わたしは、「SUN-RAY(太陽の光)」と「産霊(むすび)」がグリーフケアを介することによって見事につながることに非常に驚くとともに安心しました。
 「むすび」とは、本来、生成力つまり、自然の万物を生み出すクリエイティブな力を表わしました。社名の意味の一つである「むすび」の意味と、その大いなる力を知っていただきたいと思います。

 悲しみの闇に光が射するとき
   むすびの力あらはれいでり  庸軒