2013
02
株式会社サンレー

 代表取締役社長

  佐久間 庸和

「見えない縁を可視化する

 冠婚葬祭こそ家族の縁だ!」

葬儀と成人式

 新年早々に義父が亡くなりました。1月4日に訃報が届き、5日に通夜、6日に葬儀を行いました。義父は広島県に住んでいましたので、地元の互助会に入会し、滞りなく葬儀をあげていただきました。
 わたしは喪家の一人として、棺をかつぎ、火葬場で骨も拾いました。そして、セレモニーホールの担当者に何度も「ありがとうございます」とお礼を述べました。大切な家族の葬儀のお世話をしてくれて、心の底から有り難いと思ったからです。
 また、13日には長女が成人式を迎えました。振袖を着ましたが、松柏園ホテルで着付と美容を行いました。ついこの前まで子どもだと思っていた娘の晴れ姿を見て、父親として感無量でした。
 わずか一週間の間に義父の葬儀と長女の成人式が行われ、非常にあわただしい中にも「家族の絆」というものを強く感じました。そして、冠婚葬祭互助会の存在意義を痛感しました。

小津安二郎が描いた冠婚葬祭

 わたしたちは、さまざまな縁によって生かされています。多くの縁の中でも最も重要なのが血縁です。結婚式、葬儀、そして成人式などの通過儀礼はすべて血縁の大切さを再認識させてくれます。
 今年、2013年は、日本を代表する映画監督であった小津安二郎の生誕100周年です。「晩春」「麦秋」「お茶漬けの味」「東京物語」「早春」「彼岸花」「秋日和」「小早川家の秋」「秋刀魚の味」といった名作が有名ですが、わたしは、昔から小津映画が大好きで、ほぼ全作品を観ています。
 黒澤明と並んで「日本映画最大の巨匠」であった彼の作品には、必ずといってよいほど結婚式か葬儀のシーンが出てきました。多くの作品でヒロインを演じた原節子は花嫁衣裳を着たり、喪服を着たりしました。 小津ほど「家族」のあるべき姿を描き続けた監督はいないと世界中から評価されていますが、彼はきっと、冠婚葬祭こそが「家族」の姿をくっきりと浮かび上がらせる最高の舞台であることを知っていたのでしょう。

冠婚葬祭は家族の思い出

 紫雲閣グループでは、葬儀の最後に「思い出のアルバム」のDVDが流すことが多いですね。それらを観ると、故人が生まれたときの写真、子どもの頃、成人してからの写真。本人の宮参り、七五三、成人式、結婚式、そして、わが子の宮参り、百日祝いなどなど、冠婚葬祭の写真が多いことに気づきます。冠婚葬祭は家族との思い出そのものです。
 わたしは、数年前に奥さんを亡くされたある社員のことを思い出しました。亡くなった奥さんも残されたご主人もともに30代前半の若さでしたが、葬儀の最後に思い出のDVDが流されました。
 ラストの写真は、幸せいっぱいの結婚披露宴のショットでした。その四年前に、松柏園ホテルで二人は結婚式をあげたそうです。そのときの参列者が、ほとんどそのまま当日の葬儀に来ていました。
 わたしは、家族の絆を結び、多くの方々との縁を再確認し、感謝の心を思い起す場として「結婚式」も「葬儀」も必要であると心の底から思いました。

この世は縁に満ちている

 現在の日本社会は「無縁社会」などと呼ばれています。
 しかし、この世に無縁の人などいません。どんな人だって、必ず血縁や地縁があります。そして、多くの人は学校や職場や趣味などでその他にもさまざまな縁を得ていきます。この世には、最初から多くの「縁」で満ちているのです。ただ、それに多くの人々は気づかないだけなのです。
 わたしは、「縁」という目に見えないものを実体化して見えるようにするものこそ冠婚葬祭ではないかと思います。結婚式や葬儀、七五三や成人式や法事・法要のときほど、縁というものが強く意識されることはありません。
 冠婚葬祭が行われるとき、「縁」という抽象的概念が実体化され、可視化されるのではないでしょうか。
 そもそも人間とは「儀礼的動物」であり、社会を再生産するもの「儀礼的なもの」ではないでしょうか。わたしは、かつて『葬式は必要!』(双葉新書)に、「冠婚葬祭やめますか、そして人間やめますか」と書きました。冠婚葬祭とは、人間としての存在基盤であると確信しています。

互助会の役割を知る

 いま、冠婚葬祭互助会の社会的役割と使命が問われています。解約手数料の問題をはじめ、互助会というビジネスモデルが大きな過渡期にさしかかっていることは事実でしょう。
 その上で、わたしは、互助会の役割とは「良い人間関係づくりのお手伝いをすること」、そして使命とは「冠婚葬祭サービスの提供によって、たくさんの見えない縁を可視化すること」に尽きると思います。
 そして、「縁っていいなあ。家族っていいなあ」と思っていただくには、わたしたち冠婚葬祭業者が本当に参列者に感動を与えられる素晴らしい結婚式やお葬儀を、一件一件お世話させていただくことが大切だと思います。
 その上で、互助会が「隣人祭り」などの新しい社会的価値を創造するイノベーションに取り組めば、無縁社会を克服することができるのではないでしょうか。
 「豊かな人間関係」こそ冠婚葬祭事業のインフラであり、冠婚葬祭互助会は「有縁社会」を再構築する力を持っています。これからの時代、冠婚葬祭互助会の持つ社会的使命はますます大きくなるでしょう。

 目に見えぬ縁と絆を目に見せる
      素晴らしきかな冠婚葬祭  庸軒