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一条真也
「昭和といえばプロレスだ!」

 

 4月29日は「昭和の日」である。
 もともとは昭和天皇の誕生日で、戦前・戦中は「天長節」、戦後は「天皇誕生日」という法定祝日だった。
 昭和64(1989)年1月7日の昭和天皇の崩御により、同年以降の4月29日はそれまでの天皇誕生日としては存続できなくなった。
 それで、しばらくは「みどりの日」としていたが、平成19(2007)年に「昭和の日」と改称、「みどりの日」は5月4日に移動した。
 さて、「昭和」といえば、あなたは何を思い浮かべるだろうか。戦争の暗い歴史、高度成長の明るい時代を連想する人もいるだろうが、わたしはなんといってもプロレスである。
 「昭和プロレス」という言葉があるが、昭和はプロレスが最も輝いていた黄金期だった。残念ながら、今ではプロレスがリアルファイトでないことは周知の事実である。
 しかし、わたしが夢中でプロレスを観ていた頃はまだ真剣勝負の幻想があった。わたしは子どものころから格闘エンターテインメントとしてのプロレスをこよなく愛し、猪木信者、つまりアントニオ猪木の熱狂的なファンだった。
 何千という猪木の試合のなかで、いわゆるセメント(真剣勝負)はかのモハメッド・アリ戦とパキスタンの英雄、アクラム・ペールワン戦の2回だけと言われている。だから良いとか悪いとかではなく、それがプロレスだと思っていた。逆にその2回に限りないロマンを抱いたものだ。
 村松友視氏のベストセラー『私、プロレスの味方です』(情報センター出版局)を読んでからは、いっそうプロレスが好きでたまらなくなった。
 なにしろ、新日本プロレスも全日本プロレスも全テレビ放送を10年以上完全録画していたほどだ。それも、SONYのベータマックスで!
 目をつぶれば、今も猪木、坂口、藤波、長州、初代タイガーマスク、アンドレ、ブロディ、ハンセン、ホーガンらの雄姿が瞼に浮かんでくる。 ああ、あの頃に戻りたい!