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一条真也
「入棺体験で生まれ変わる!」

 

 「終活フェア」などで人気を呼んでいる「入棺体験」なるものをご存じだろうか。生きた人間が棺に入るという「死と再生」の疑似体験である。
 先日、わたしが経営する冠婚葬祭会社の施設で開催されたお客さま感謝祭でも実施したのだが、わたしも生まれて初めて棺に入ってみた。
 横たわって目を閉じると不思議な感じで、本当に自分が死んだような気がした。わたしは「これまでの生き方に悔いはないか」と振り返り、わが人生をフラッシュバックしてみた。さまざまな思いが走馬灯のように次から次へと浮かんでは消えた。
 入棺体験は、自分を見つめ直す行為になると実感した。そして、「わたしが人生を卒業する日はいつだろう。いずれにせよ、今日は残りの人生の第1日目だな」と思ったりした。
 ふと、自分の葬儀で流れる音楽をイメージしてみた。人生の卒業式にふさわしい明るい曲がいい。ならばわたしのカラオケ愛唱歌がいい。
 春ならば、サザンオールスターズの「彩~Aja~」。夏ならば、矢沢永吉の「時間よ止まれ」。秋ならば、佐野元春の「SOMEDAY」。そして冬ならば、北島三郎の「まつり」といったところか。
 しかし、そのままでは面白くない。弦楽四重奏団で葬送にふさわしいクラシック音楽を基調に変奏曲風にカラオケ愛唱歌のメロディーを挿入して演奏してもらえれば、意外性があって参列者にも楽しんでいただけるかもしれない。葬儀で流す音楽に限らず、「終活」では自分自身の「死」を具体的に想い描くことが大事である。
 入棺体験によって、わたしは「死」と「再生」をシミュレーションすることができた。棺から出た後、生まれ変わったつもりで頑張れば、大抵のことならば成し遂げられると感じた。みなさんも「入棺体験」の機会があれば、ぜひ棺に入ってみてほしい。
 そこには、これまで思いもしなかった豊かな精神世界が待っているかもしれない。今日が、残りの人生の第1日目であることをお忘れなく!