2005
株式会社サンレー

代表取締役社長

佐久間 庸和

PHP研究所刊行

『2005年トップが綴る 仕事の指針 心の座標軸』より《1月1週》

わが社のミッション

 

 わが社は冠婚葬祭を事業とする会社です。どんな仕事にもミッション(社会的使命)というものがあるはずですが、とりわけ冠婚葬祭ほど大きな使命を与えられている仕事はないと私は思っています。なぜなら、何よりもまず、万人にとっての大問題である「結婚」と「死」に関わる仕事だからです。
 「結婚は最高の平和である」。私は、いつもこの言葉を結婚する若い二人に贈っています。わが社の冠婚部門のスタッフに対しても、ことあるごとに言います。人と人とがいがみ合う、それが発展すれば喧嘩になり、それぞれ仲間を集めて抗争となり、さらには9・11米国同時多発テロのような悲劇を引き起こし、最終的には戦争へと至ってしまいます。逆に、まったくの赤の他人同士であるにもかかわらず、人と人とが認め合い、愛し合い、ともに人生を歩んでいくことを誓い合う結婚とは究極の平和であると言えます。結婚ほど平和な「出来事」はなく、「戦争」の真の反対概念であるとさえ思います。
 「死は最大の平等である」。この言葉は、葬祭部門のスタッフによく言います。ラ・ロシュフーコーが「太陽と死は直視することができない」と語ったように、太陽と死には「不可視性」という共通点があります。私はそれに加えて「平等性」という共通点があると思っています。太陽はあらゆる地上の存在に対して平等です。中村天風の言葉を借りれば、太陽光線は美人の顔にも降り注げば、犬の糞をも照らすのです。わが社のサンレーという社名は、万人に対して平等に冠婚葬祭を提供したいという願いを込めて、「太陽光線(sun‐ray)」という意味を持っています。そして、「死」も平等です。「生」は平等ではなく、差別に満ち満ちています。しかし、王様でも大富豪でも庶民でも囚人でも、「死」だけは平等に訪れるのです。
 結婚式、葬儀といった私たちの仕事が、実は人類の「平和」と「平等」を実現するこの上なく重要な営みであることを社員にぜひ知ってもらいたいのです。