2006
株式会社サンレー

代表取締役社長

佐久間 庸和

月刊PHP10月号

『私の信条 第172回』より

人類の平和と平等に貢献

 

 当社は、父が興したホテル業に始まります。冠婚葬祭互助会を全国規模で組織した後、一九七七年に日本初の葬祭会館を開設しました。自宅での葬儀が一般的だった当時、このことは冠婚葬祭業界に大きなイノベーションをもたらし、会館での葬儀が全国に広がっていきました。
 5年前に社長に就任したとき、私はそれまでの拡大路線から方向転換を図りました。具体的には、事業は冠婚葬祭に絞り込み、全国に点在する結婚式場やセレモニーホールは地域でトップシェアを獲得しているところだけを残しました。体制整備が完了した今、日本人の離婚率と自殺率を減らすことに全力で取り組みたいと考えています。
 私たちがかかわる結婚式の目的とは、男女の魂と魂の結びつきに一役買うことです。アメリカ並みに離婚率が急速に上がっている中で、「日本一離婚しにくい結婚式」をご提供しようと、神前式を積極的に提案しています。
 神前式では三三九度、玉串奉奠(たまぐしほうてん)、柏手(かしわで)と多くの段階を踏まなければなりません。これによって結婚するという自覚が強まり、離婚率も低くなっています。また人類史上で最も離婚率の低かった古代ローマ式の人前式なども用意しています。
 もう一つの自殺者については、高齢者の占める割合が多いことが特徴です。長生きされた人ほど社会に貢献されているにもかかわらず、日本は高齢者が生きづらい社会になっています。
 「老い」をマイナスにとらえるのは、その先にある「死」を忌(い)み嫌っているからでしょう。そんな「老い」と「死」のマイナスイメージをなんとしても変えていきたいと思っています。
 本社のある北九州市は最も高齢化率が高い都市です。「老い」が幸福なことだと理解されれば、逆に北九州市は日本一幸福な街になれます。そのため、不安な思いで一人暮らしをされている高齢者の方々に北九州市に集まっていただいて「高齢者特区」を作り、俳句賞や囲碁カップなどを開催して、高齢者向きの文化を根づかせたい。
 活動拠点を広げるため、2年前には高齢者のためのスポーツクラブやカルチャーセンター、図書館、美術館などに葬祭会館を併設した世界初の複合施設をオープンさせました。
 死は誰にでも訪れるものです。そのことをきちんと受けとめれば、今という時間を精一杯生きようと思うことができます。そのように、「人は老いるほど豊かになる」というメッセージをどんどん発信し、自殺者を減らしていくつもりです。
 日本の葬儀自体の変革にも取り組んでいます。規則的に満ち欠けを繰り返す月は「死」と「再生」のシンボルであり、人が亡くなると月へ行くという考え方は古代から存在しました。月を「あの世」に見立て、今まで亡くなった人を偲(しの)ぶとき地下に向けられていた眼差(まなざ)しを月に向け、天上への眼差しを持っていただく。レーザー光線を用いて送魂する、そんな葬儀が徐々に定着しつつあります。
 今年、当社は設立40周年を迎えます。この記念すべき年に、私が尊敬するマザー・テレサが活動したインドへ末期(まつご)に食べるチョコレートやご遺体を包む布を届けに行き、葬儀を挙げられない方の最期(さいご)のお手伝いをしたいと思っています。
 結婚式は、他人だった二つの魂が結合する尊い儀式であり、「最高の平和」に他なりません。また、死は誰にでも訪れる「最大の平等」です。世界の平安に貢献し、人類の平等にかかわる仕事を全うすること。これが私たちのミッションであり、私たちの信条であり続けます。