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一条真也
「タイガーマスク運動〜素晴らしい日本人の心」

 

こんにちは、一条真也です。
あわただしい1月が過ぎ、早くも2月になりましたね。みなさん、いかがお過ごしですか。
昨年は『葬式は、要らない』などという本が売れたり、「無縁社会」が流行語に選ばれるなど嫌な年でしたが、今年はどうも風向きが変わったようです。
正月早々から、日本列島各地で心温まる出来事が続出しました。
そうです、 「タイガーマスク運動」です!
児童養護施設の子どもたちへのランドセル、文房具、オモチャなどのプレゼント行為が全国的な拡がりを見せました。
プレゼントの主は、「伊達直人」と名乗りました。プロレス・マンガの名作「タイガーマスク」の主人公の名前です。 原作者は、かの梶原一騎です。日本が生んだ史上最高のマンガ原作者です。
わたしは少年時代から「強い男」に憧れ、梶原作品の大ファンでした。
わたしの「一条真也」というペンネームは、「タイガーマスク」と並ぶ梶原一騎の名作「柔道一直線」の主人公である「一条直也」から取ったほどです。
じつは、わたしは「伊達直人」をもじった「伊達真人」というペンネームも考えていたのです! 
もしかしたら、「一条真也の真心コラム」は「伊達真人の直心コラム」だったかもしれないのです(笑)。 
いや、ほんとに。
そのマンガ・キャラクターとしての伊達直人は、親のいない孤児(原作では「みなし児」という言葉が使われていました)だったという設定でした。彼は自身が育った児童養護施設の「ちびっこハウス」の子どもたちにさまざまなプレゼントを贈るのですが、自分の正体は隠して、虎の仮面をかぶり、タイガーマスクとして善意の行動を重ねるのでした。アニメ化された「タイガーマスク」のエンディング・テーマは「みなし児のバラード」というものでした。
ちなみに、新聞やテレビでは「伊達直人」を説明する際に、なぜか「ちびっこハウス」のエピソードを封印しています。でも、これでは現代の「伊達直人」の真意は伝わりません。
もし、「みなし児」というマンガ掲載あるいはアニメ放送当時の言葉が問題であるならば、現在はその言葉が不適切であると説明すればいいのではないかと思いました。
名前も「伊達直人」だけではなく、「矢吹丈」も登場しました。
これも「タイガーマスク」と並ぶ梶原一騎の名作「あしたのジョー」の主人公の名ですね。
また、岡山県では「桃太郎」も現れたそうです。
多くの人々が善意の寄付活動にあたって、本名を明かさず、マンガや昔話のキャラクターの名を語っているところが興味深いです。匿名ブログなどで仮面をかぶったまま他人の誹謗中傷をする行為は卑怯千万ですが、匿名の善行は日本人の美点だと思います。
プレゼントの内容もランドセルや文房具だけでなく、童話集、紙おむつ、現金も登場。
米や野菜を届ける人もいましたが、この人は「田舎 伊達直人」を名乗ったそうです。
児童養護施設といえば、わが社も毎年、11月18日の創立記念日に文房具やお菓子などを寄贈させていただいています。
また、北九州市にサーカスが来たときは、市内の児童養護施設のお子さんたちを全員招待することにしています。最近、木下サーカスが来たときも一日の興行を借り切って、お子さんたちを招待させていただきました。みんな、非常に喜んでくれました。
わが社には数え切れないほど多くのサーカスの絵とお礼の手紙が届いたことは言うまでもありません。それを、わたしが読み、社内報に掲載して全社員も読みます。みんな、感動します。
自分以外の誰かの「こころ」と自分の「こころ」がつながったことに感動するのです。
児童養護施設には、親がいないお子さん、または何らかの事情で親と離れて暮らしているお子さんが生活しています。文房具なども不足しがちなようです。
あるとき、クレヨンのセットをお配りしたことがあるのですが、しばらくして社長であるわたし宛にお礼状と1枚の絵が届きました。
その絵には大きな赤い花が描かれていました。
手紙を読むと、そこには次のような内容が書かれていました。
「今までクレヨンのセットが園に1つしかなかったので、赤などはすぐ減ってしまって使えませんでした。私は赤い花の絵が描きたかったのですが、描くことができませんでした。サンレーさんが新しいクレヨンをたくさんプレゼントしてくれたので、やっと描くことができます。最初に描いた絵は、社長さんにプレゼントします」
わたしは、この手紙と赤い花の絵を前にして涙がとまりませんでした。
このモノ余りの世の中で、このお子さんたちはなんとモノを大切にし、また感謝の気持ちというものを持っているのだろうと思って感動したのです。
いくら親がいても感謝の気持ちを持たず、わがまま放題の子どもはいくらでもいます。
わたしは、このお子さんたちを育てている園の先生たちに心から尊敬の念を抱きました。
このたびの「タイガーマスク現象」は、企業ではなく、一般市民の方々が自発的に行っているようですね。本当に素晴らしいことだと思います。
もしかすると、「無縁社会」とか「孤族の国」と呼ばれるまでに人心が荒んだ果てのリバウンド現象かもしれません。「このままでは日本は大変なことになる!」という人々の危機感が多くの伊達直人を生んだような気がします。 隣人愛があれば、自分以外のどんな人でも愛すべき「となりびと」です。
伊達直人とは、結局「となりびと」の別名ではないでしょうか。
今回の「タイガーマスク現象」が、日本人の中に眠る「思いやり」「助け合い」「支え合い」の心に火をつけたのかもしれませんね。
いよいよ「隣人の時代」、そして「ハートフル・ソサエティ」が始まったような気がしてなりません。
2011.2.1