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一条真也
「『人間尊重の「かたち」』~礼の実践50年」

 

こんにちは、一条真也です。
わたしの父でもあるサンレーグループの佐久間進会長が新刊『人間尊重の「かたち」~礼の実践五〇年』(PHP研究所)を上梓しました。
タイトルにある「人間尊重」は、かの出光佐三翁の哲学を象徴する言葉です。佐久間会長が若い頃、地元・北九州からスタートして大実業家となった佐三翁を深く尊敬しており、その思想の清華である「人間尊重」を自らが創業した会社の経営理念としました。以後、わが社のミッションとなっています。
また、サブタイトルは「礼の実践五十年」ですが、佐三翁の著書『人間尊重五十年』(春秋社)を連想させ、そのまま偉大な先達へのオマージュとなっています。
「まえがき」の冒頭で、佐久間会長は五十年前に出光佐三の言葉を初めて知ったときの感動を綴っています。次のような言葉でした。
「社会とは人間が集まってできたものであるから人間は互いに仲良くすると、そして力を合わせることが大切です。それは人間の尊厳だからです。平和の基です。人間の美しさでもあります。私はそれを人間尊重と言っております」
佐久間会長は「私の人生を振り返る時、礼の実践を通して、『人間尊重』とはどういう『かたち』になるのかを社会経営、社会貢献の中で目指してきたのではないか、そんな思いがしています」と述べています。また、佐久間会長は「人間尊重とは、人と人とがお互いに仲良くし、力を合わせることです」と喝破します。そして、互いに助け譲り合う「互譲互助」「和」の精神というものが神道の根幹を成す思想であることを示し、「自然と人間の調和こそが日本人の精神形成の基」であると述べています。
わがサンレーをはじめ、冠婚葬祭互助会は「互助社会をつくろう!」「共生社会をつくろう!」「支え合う社会をつくろう!」というスローガンを掲げてきました。それらは、まさに日本人が持っている最大の美点を表現しています。わが社は、それを長年にわたって言い続けてきました。東日本大震災後、「絆」という言葉がクローズアップされています。絆とはまさに人と人の結びつきです。佐久間会長は「かつて絆を大切にしてきた日本人の心が覚醒し、お互いに助け合うこと、支え合うことが再認識され、われわれ冠婚葬祭互助会に対する評価も必ず上がってくると思います」と述べています。
「助け合い」から「支え合い」へ・・・・・・
冠婚葬祭を通して、もう一度人と人との絆を結び直す時代が来たように思えてなりません。
百田尚樹氏のベストセラー小説『海賊とよばれた男』の主人公のモデルとして再評価を受けた出光佐三翁は96年の生涯の中で、自社の社員に「金を儲けよ」とは一度も言ったことがないそうです。その代わりに「人を愛せよ」と言いました。そして、「人間を尊重せよ」と言いました。
「人間尊重」といえば、2500年前の古代中国で孔子が説いた「礼」に源流があります。そう、「人間尊重」とは「礼」の別名なのです。人間尊重の「かたち」とは、挨拶であり、お辞儀であり、冠婚葬祭に代表される儀式文化のこと。そこに父は気づいたのです。
陽明学者の安岡正篤は、「人間はなぜ礼をするのか」について考え抜きました。彼は「吾によって汝を礼す。汝によって吾を礼す」という言葉を引き合いに出して、「本当の人間尊重は礼をすることだ。お互いに礼をする、すべてはそこから始まるのでなければならない。お互いに狎れ、お互いに侮り、お互いに軽んじて、何が人間尊重であるか」と喝破しました。
また、「経営の神様」といわれた松下幸之助も、何より礼を重んじた人でした。
彼は、世界中すべての国民民族が、言葉は違うがみな同じように礼を言い、挨拶をすることを不思議に思いながらも、それを人間としての自然の姿、人間的行為であるとしました。
すなわち礼とは「人の道」であるとしたのです。
「人間尊重」の思想は、「人が主役」と唱えたドラッカーにも通じます。
出光佐三は「人間尊重」と「人物養成」を並べて口にすることが多かったそうです。これは、「尊重される人間になれ」というメッセージがあったのでしょう。
彼は「尊重すべき人間になれ。そして、尊重すべき人間というのは平和と福祉を打ち立てる人間だと、こういう意味だ。人間に物を与えたりなにかすることが、人間尊重じゃないよ」という言葉を残しています。それとともに、企業とは人間を育成する場であるという理念がありました。「人間を育てるのに金を惜しむな」というのも彼の口癖だったそうです。 これもドラッカーのマネジメント思想に通じます。
ちなみに、出光佐三は1885年生まれ、松下幸之助は1894年生まれ、安岡正篤は1898年生まれ、そしてドラッカーは1909年生まれと、ほぼ同時代人です。わたしは、いつの日か、この4人の人物の人間尊重思想を俯瞰した本を書きたいと思っています。
冠婚葬祭業を生業とするわが社においては「礼とは人間尊重である」という考え方を全社員で共有することを目指してきました。
「人間尊重」を経営の軸に、50年にわたり「礼」を実践してきた佐久間会長は、「私も齢80を迎えます。事業の節目、人生の節目を迎えるにあたり、次のステップへのきっかけにするべく、本書を記しました。
次世代に向け、本書が何かしらのヒントになってくれれば幸いです」と書き記しています。
これからの企業には「アップデート」とともに「初期設定」が求められます。48年前、佐久間会長は万人に太陽の光のように等しく冠婚葬祭のサービスを提供したいと願って、サンレーを創業しました。佐久間会長こそは、わが社の「初期設定」を行った本人です。わが社の「初期設定」を確認する上でも、佐久間会長の言葉を振り返ることができるという意味でも意義ある1冊であると思います。
さらには、サンレーだけでなく、冠婚葬祭互助会事業の「初期設定」もこの本にはふんだんに書かれています。大きな曲がり角を迎える互助会業界にとって、一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)の初代会長でもある佐久間会長の言葉は大きな指針となるのではないでしょうか。同書の刊行にあたり、わたしは「半世紀 礼を求めて来た道は 支え合う世をつくる旅路か」という歌を詠みました。
最後に、出光佐三翁は「石油業は、人間尊重の実体をあらわすための手段にすぎず」と言いました。
不遜を承知で言わせていただければ、わたしは「冠婚葬祭業とは、人間尊重の実体をあらわすことそのものである」と思っています。