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一条真也
「青木新門氏との出会い」

 

 先日、富山の地を訪れた。わたしが会長を務める全国冠婚葬祭互助会連盟(全互連)の定時総会に出席するため、北九州より前日入りした。
 その夜、富山駅前のホテルで作家の青木新門氏にお会いした。
 映画「おくりびと」が、第32回日本アカデミー賞最優秀作品賞、第81回米アカデミー賞外国語映画賞を受賞してから時が過ぎたが、あの興奮と感動は今でも憶えている。
 主演の本木雅弘氏は「ある本」に出合って大変感動し、映画化の構想を温めていたそうだが、その本こそ青木氏の著書『納棺夫日記』である。
 青木氏は昭和12年、富山県下新川郡入善町のお生まれで、長く「納棺師」として葬儀の現場で働かれた。その尊いご体験が『納棺夫日記』には感動的に綴られている。
 じつは、昨年の夏にわたしが上梓した『永遠葬』(現代書林)を青木氏に献本させていただいたところ、氏はご自身のブログで、「内容は島田裕巳氏の『葬式は、要らない』や近著『0葬』を批判した『葬式は要る』という立場で、なぜ要るのかということを多くの事例や理由をあげて書かれた本である。島田氏が個の命にとらわれているのに対して、一条氏は永遠を見据えているのがいい」と書いて下さった。わたしは、このブログ記事を読んで、感激した。
 青木氏からはメールも頂戴し、「一度ぜひお会いしましょう」と言っていただいた。その後、メールのやりとりなどを重ねて、このたびの対面に至ったわけである。「一条さん、あなたに会いたかったんですよ」との初対面の言葉が嬉しかった。
 わたしは、2時間にわたって、青木氏と葬儀について意見交換をさせていただいた。青木氏は「葬儀は絶対になくなりませんよ」と述べられ、最後は「『葬式は、要らない』じゃなくて、『葬式は、なくならない』ですよ」とも言われた。その言葉には、氏の人生を感じさせる重みがあった。
 わたしにとって、葬儀の意味を改めて学んだ有意義な時間となった。