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一条真也
グリーフケアの時代

『グリーフケアの時代』(弘文堂)という本が出版された。「『喪失の悲しみ』に寄り添う」というサブタイトルが付されている。上智大学グリーフケア研究所所長を務める島薗進氏(東京大学名誉教授)、同研究所副所長で特任教授の鎌田東二氏(京都大学名誉教授)、そして同研究所客員教授であるわたしの3人の共著だ。

上智大学グリーフケア研究所は、グリーフ(死別による悲嘆)を抱える方のケアについての研究と、グリーフケア、スピリチュアルケアに携わる人材の養成を目的として設立された。「臨床傾聴士」「スピリチュアルケア師」等の資格取得のための専門課程の他、一般向けの公開講座にも力を入れている。

そのテキストである同書は学問としてのグリーフケアの要点を統括した入門書としてはもちろん、大切な人を亡くした本人や、宗教家・支援職の方々にも資する内容である。

 全3章のうち、島薗氏は第1章「日本人の死生観とグリーフケアの時代」を、鎌田氏は第2章「人は何によって生きるのか」を担当。わたしは第3章「グリーフケア・サポートの実践」を担当し、「ケアとしての葬儀の取り組み」「ケアとして遺族会の役割」「ケアとしての『笑い』」「ケアとしての『読書』」「ケアとしての『映画鑑賞』」について詳しく述べた。

 例えばわが社でサポートさせていただいている「月あかりの会」や「うさぎの会」などの自助グループの概要と活動を取り上げ、また、毎月、漫談家を招いて「笑いの会」を開き、半年に1度は落語家を招いて大規模なイベントを開催していることも紹介した。そして、もちろん本業である葬儀や法事・法要のお手伝いも・・・。思うに、あの手この手で「喪失」の悲しみに寄り添うわが社は、グリーフケア・サポートの実践集団といえるのではあるまいか。

 わが社サンレーの本業は、冠婚葬祭互助会である。長年にわたって多くの葬儀をお手伝いしてきたが、愛する人を亡くしたばかりの方々に接する仕事は、けっしてビジネスライクな感情だけで済まされるものではなく、いつも魂を揺さぶられる思いを味わう。

なぜなら、死による別れは誰にとっても一生に数度のつらい経験だからである。その直後のご遺族をサポートさせていただく中で、わたしは数多くの悲嘆を目撃してきた。

冠婚葬祭互助会としてグリーフケアのサポート活動に取り組むことは営利目的だと誤解されることもある。その難しさは、常々感じるところだが、これからも理論と実践を両立させ、日本一のグリーフケア企業を目指したいと思う。