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一条真也
クリスマスに亡き人を想う

 ローマ教皇フランシスコの来日は記憶に新しい。つねに核兵器の廃絶を訴えてきた教皇は、被爆地である長崎や広島を訪れ、東京では東日本大震災の被災者や東京電力福島第1原発事故の避難者らと対話した。

 さらには東京ドームで5万人参列の大規模ミサを行い、日本人信者に向けてイエス・キリストの大いなる愛を説いた。

 そのイエス・キリストの誕生日とされているのがクリスマスである。いま、街中はクリスマス一色だ。わが家でも、妻が作ったオリジナルのクリスマスツリーが飾られている。

 前日のクリスマス・イヴに押され気味だとはいえ、クリスマスには世界中の家族や仲間、恋人がこの日を祝い合う。

 しかし、この日はイエスの本当の誕生日ではないという。意外に思われるかもしれないが、イエスの本当の誕生日がいつかは現在でもわかっていない。

 ゆえに4世紀の初頭までキリスト教徒は、後にキリスト教会の重要な祝日となるこの日に、集まって礼拝することもなく、キリストの誕生を話題にすることもなく、他の日と何の変わりもなく静かに過ごしていた。

これに対して、同じ頃、まだキリスト教を受け入れていなかったローマ帝国では、12月25日は太陽崇拝の特別な祝日とされていたという。当時、ローマには太陽を崇拝するミトラス教が普及していた。その主祭日がローマ暦で「冬至」に当たる12月25日に定められていたのである。

また、真冬のクリスマスとは死者の祭であった。人類学者のクロード・レヴィ=ストロースと中沢新一氏の共著『サンタクロースの秘密』(せりか書房)に詳しいが、冬至の時期、太陽はもっとも力を弱め、人の世界から遠くに去る。世界はすべてのバランスを失っていく。そのとき、生者と死者の力関係のバランスの崩壊を利用して、生者の世界には、おびただしい死者の霊が出現するのだ。

 そこで生者は、訪れた死者の霊を心を込めてもてなす。また、贈り物を与えて、彼らが喜んで立ち去るようにしてあげる。そうすると世界には、失われたバランスが回復され、太陽は再び力を取り戻して、春が訪れる。すなわち、凍てついた大地の下にあった生命が、一斉によみがえりを果たす季節が、また到来してくることになるのである。

 このように日本のお盆にも似て、クリスマスとは死者をもてなす祭だった。これがクリスマスの正体だ。ヨーロッパで生まれた死者の祭は、アメリカに渡ってハロウィーンとなった。

ご馳走を食べたり、騒ぐのもいいが、聖夜には、今は亡き人たちを想ってみてはいかがか。なつかしい故人を思い出しながら、メリー・クリスマス!