第10回
一条真也
「他人を祝う心を持つ」

 

 誰でも「おめでとう」という言葉をかけられると嬉しいものですね。
 祝うということ、特に他人の慶事を祝うということは非常に重要だと思います。なぜなら「祝い」とは他人の「喜び」に共感することだからです。他人の「苦しみ」に対して共感する「見舞い」の対極に位置するものですが、実は両者とも他人の心に共感するという点では同じです。よく「他人の不幸は蜜の味」などといわれます。確かにそういった部分が人間の心に潜んでいることは否定できません。だからといって居直ってそれを露骨に表現しはじめたら人間終わりです。他人を祝う心とは人間ならではの最高にポジティブな心の働きだと思います。
 祝い事といえば、誕生、合格、就職、結婚などが思い浮かびます。でも老若男女を問わず、誰にでも毎年訪れるお祝いがあります。そう、誕生日です。
 誕生日を祝うことは「あなたが生まれたことは正しいですよ」と、その人の存在価値を全面的に肯定すること、いわば「人間尊重」の行為そのものなのです。祝われた人は感謝の言葉を返すはず。「おめでとう」と「ありがとう」の声がたくさん行き交うことは、思いやりの社会、つまり「ハートフル・ソサエティ」の実現です。